2010年9月2日
中国で東野圭吾が売れている。初めて翻訳・出版されたのは2年前。最近では大型書店の平台に陳列されるなど、日本の作家としては抜群の存在感と売れ行きを見せ始めている。いまなぜ東野作品が売れるのか。中国の編集者に話を聞いた。
■『白夜行』21万部 『容疑者Xの献身』20万部
上海の文化街、福州路。街のランドマークにもなっている大型書店「上海書城」の外国文学コーナーに、東野圭吾作品が山積みされていた。『白夜行』『嫌疑人X的献身(容疑者Xの献身)』など日本でもおなじみの作品を、デート中のカップルや学生が次々と手に取り読んでいた。
既に12冊の東野作品を翻訳・出版しているのは北京の大手編集プロダクション、新経典文化。『窓辺的小豆豆(窓ぎわのトットちゃん)』など多くの日本作品の翻訳で実績を持ち、いま中国の出版業界で最も勢いのある会社だ。
「東野圭吾はすごい作家です。言葉は簡潔なのに、小説と社会の現実を見事に結合させている。しかも結末を分からせず、読者をだましたまま最後の一ページまで連れていく」
東野作品の魅力をそう語るのは陳明俊(チェン・ミンチュン)社長。編集者の翻訳や台湾版で作品を読み、2006年に初めて著作権契約を結んだ。08年9月発行の『白夜行』は21万部、『嫌疑人X的献身』は20万部、09年12月発行の『放学后(放課後)』も13万部売れている。
「細かい販売促進で、じっくり売るのが弊社の方針。まだまだ売れますよ」。『窓辺的小豆豆』を300万部売った陳社長は自信満々だ。
『十一字殺人(11文字の殺人)』など3冊を出版しているのは上海訳文出版社。担当編集者の趙平(チャオ・ピン)さんは自身が熱烈な東野ファンだ。同社はトルストイなど古典の翻訳がメーン。「東野先生のようなエンターテインメント作品を出版するのは簡単ではなかった」が、最後は熱意で幹部の反対を押し切ったという。
■「読者の機嫌とらない」 「愛消えストーリー終わる」
今春刊行した3冊はいずれも初版2万部のスタート。「今の中国では初版6千〜8千部が当たり前。かなり破格の扱い」というが、間もなく増刷がかかるほど好調だ。
東野作品が中国でヒットする理由は何か。趙さんは「東野先生はすばらしいストーリーテラー。伏線を持った複数のストーリーが最後に一つになる。今まで読んだことがない作風が中国人の目に新鮮に映る」と分析する。
「東野の小説は愛を描く小説だ。愛が消える時、ストーリーも終わる」「中国の読者はハッピーエンドを好むが、東野は読者のご機嫌を取らない」。一般市民が本や映画、音楽などの評論を発表するインターネットサイト「豆瓣(トウパン)」にも熱烈な書き込みが多い。
一部には「物語はお上手だが、情理にかなっていない」という批判もある。しかし、かつて渡辺淳一作品を手掛けたことがある上海人民出版社の編集者、曹楊(ツァオ・ヤン)さんは「日本人作家としては村上春樹、渡辺淳一以来のブームの予感がする」と語る。
「中国の“東野熱”は始まったばかり。今後さらに盛り上がるはずです」(趙さん)(竹端直樹)
著者:東野 圭吾
出版社:集英社 価格:¥ 1,050
著者:東野 圭吾
出版社:文藝春秋 価格:¥ 660
著者:黒柳 徹子
出版社:講談社 価格:¥ 680
著者:東野 圭吾
出版社:講談社 価格:¥ 600
著者:東野 圭吾
出版社:光文社 価格:¥ 580