表紙には緑の地にオレンジで手書きのタイトルがあるだけ。帯には「大豆インクを使用」なんて書いてある。内容に関する記述は一切なし。雑誌で読んだことがなければ、どんなマンガか見当もつかないだろう。名前で売れるほどメジャーな作家でもなし、書店でビニールパックされたら、偶然手にとって買う人は皆無に近いのではないか。
が、それは作者はもちろん読者にとっても損失だ。淡泊な外見とは裏腹に、中身のほうはユニークかつ濃厚な味わい。何しろ主人公が「菌が見える」という設定からして普通じゃない。しかも、多種多様な菌が特徴を捉(とら)えて(?)可愛くキャラクター化されており、「かもすぞー」「すっぱくしようよ」「糖うめー」とかしゃべるという、世界初の“菌マンガ”なのだ。
人間と菌の関係や発酵に関するうんちくもたっぷりで学習マンガ的要素もあるが、本筋は、特異な能力を持った主人公をめぐり、さまざまな人々の思惑が絡む群像劇。『動物のお医者さん』や『げんしけん』と同様に、大学の中でもちょっと変わった領域(本作の場合は農大)を舞台とした青春モノとしても秀逸だ。
ちなみに、作者の初単行本は『週刊石川雅之』というタイトルだった。大胆というか人を食ってるというか、そのギャグとシリアスの交じった微妙なセンスは本作にも通じる。覚えておいて損のない名前である。