小学三年生がプロ野球の投手として活躍する。本作はそういう漫画である。
「将来はプロ野球選手になるのが夢です」という子供ではなく、八歳にしてプロで通用する球を投げる男子。幾多の困難を乗り越えながら、実在の選手たちと真正面から渡り合う。「子供だから」などという手かげんやなめた態度をことごとく粉砕する快速球を、主人公滝巨人(たききよと)は投げ込む。
一九七七〜八六年の長期間に、五つの雑誌を舞台に物語は展開された。当時の日本プロ野球選手(OBを含む)が次々に登場する。
読売ジャイアンツにドラフト1位(!)で指名されて参加した春季キャンプ。宿舎で同室になり、付きっきりで巨人くんの面倒を見ながら最初に投手としての心構えを教えるのは、堀内恒夫である。長嶋茂雄が監督として、金田正一が大先輩として、巨人くんに野球における哲学や、技術と作法を指導していく。
気がつくと読者は、巨人くんと同じ視線に立っている。プロ野球のいろはからちょっとした裏事情まで、様々な“基本”を読み進むうちに学んでいる。野球に対する作者の丁寧な心づかいが全編にほどこされているからである。
優れたプロ野球選手のプレイを見ていると、野球を覚えたての子供の頃の気持ちにふいに戻されることがある。本作はそんな日本人に潜む“野球小僧心”を強く刺激するのであった。