人生の結果を勝ち負けで判定することが特別なことではなくなって久しい。負けたからといってそれが何だ、という人の発言が、負け犬の遠吠(とおぼ)え、居直りの暴言としておもしろおかしく詮議(せんぎ)されたりする。
しかし、人生の勝ち負けは、どこのどいつがどういう基準で決めるのであろうか。どうせ死んでしまえば皆同じ。地獄の沙汰(さた)も金次第というが、ならば金のない者は勝手に天国へ行けばいい。道徳律やら幸/不幸の判断ならば自分が決める。山松ゆうきちの漫画はそういう、人生に勝ち負けなどない、という人々の息づかいを力強く伝える。
とはいえ山松は、世間の大勢からはみ出した者、アウトローといわれる者の歩みや考えや発言を全面的に称揚しているのではない。そういう人々は確実にそこかしこに存在し、そこには他の誰にも較(くら)べられぬ悲喜劇がそれぞれに展開されていることを綴(つづ)る。ある者は豪放磊落(ごうほうらいらく)であり、ある者はとことん健気(けなげ)であり、ある者は底抜けにお人好(ひとよ)しであり、ある者はどうしようもなく粗忽(そこつ)である。ず抜けた悲しみと背中合わせに、爆笑の素(もと)がある。
世の中のメインストリームからどういわれようとかまわない、山松もそういう人なのだろう。有無をいわせぬドラマに呆然(ぼうぜん)とした後、戦慄(せんりつ)に極めて近い感動がじわじわと最低三日は続く。読後「山松万歳」と叫ばずにはいられぬ名作集。