まだまだ残暑は厳しいけれど、もう1〜2週間もすれば確実に秋の気配が漂い始める。そんな四季の移り変わりを最も敏感に示すのが草花だろう。その姿を花器の上に凝縮・再現した生け花は、季節の花を愛(め)でる日本人の心性の表出とも言える。
な〜んてもっともらしいことを書いてはみたが、実は生け花のことなど何も知らない。それでも、生け花をモチーフとした本作をすんなり読めたのは、作者の語り口の巧みさゆえだ。
ふとしたきっかけから生け花教室の門を叩(たた)いた主人公のOLが、花を〈生けること〉で自分と向き合い、〈生きること〉の豊かさを知る。未知の世界だった生け花が彼女の中に新たな回路を開いたのと同様に、私のような門外漢の読者にも視界がスーッと広がるような爽快(そうかい)感を与えてくれる。〈表現するって気持ちいいですよね/自分の想(おも)いがだれかに届くってシンプルだけど喜びの基本です〉といった生け花教室の講師の言葉にも納得だ。
秋桜(コスモス)、紅葉、万年青(おもと)、桜、花菖蒲(はなしょうぶ)など季節ごとの花をテーマに1年間の主人公のささやかな成長を綴(つづ)る筆致は優しく繊細。絵柄もストーリーも派手さはないが、それがかえって日本の四季の情緒をほどよく感じさせる。女性マンガで、しかも花がテーマというと、男性諸氏は腰が引けるかもしれないが、読んで損ナシ。本書に出てくる花知識を覚えておくと、女子受けもいいですよ。