意識が肉体を抜け出して、空中を浮遊する。そんな幽体離脱現象が自分の身に生じた主人公を描く、ミステリードラマだ。
といっても、あまりオカルトめいた趣向の作品ではない。不可解な死を迎えた姉の遺品のCDを聞くと、なぜか肉体を離脱して浮遊するようになってしまった主人公は、姉の死の謎を追いながら、幽体という奇妙な立場から改めて世の中を見渡すことになる。それまでは気にもしていなかった社会のありさまが、浮遊した高い場所から俯瞰(ふかん)することで別の姿を見せていく中、やがて主人公は幽体離脱現象の陰にうごめく国家的策謀の謎に迫っていく——。
不思議な読み味のまんがだ。この作品の主人公は、どんどん浮いていく。肉体を脱して浮くことで、やがて世の中からも浮いていく。世の中の流れに飲み込まれることなく、外から眺めるアウトサイダーの視点に立ち、いつしか現代社会や人類史を俯瞰する場所まで行きつく。
一方では、浮くことをやめ、地に足をつけて生きようと決心する幽体仲間の姿が描かれる。いくら浮いても、この世に生きる以上、完全なアウトサイダーにはなれない。俯瞰の視点に立ちながらも、地に足をつけて現実の世の中に翻弄(ほんろう)されながら生きていく。そんな両極の往復運動の中間域で、主人公の模索が続いていく。多くのテーマが交錯するスリリングな展開のまんがだ。