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コミックガイド

ナチュン [著]都留泰作

[掲載]2007年03月11日
[評者]南信長

 オープニングでいきなり世界に引きずり込まれた。事故により脳の左半球を失った天才数学者が、イルカの生態を延々映したビデオを「数学論文」として発表。学会では困惑と失笑を買っただけだったが、図書館でその映像を見た主人公の青年は、奇妙なトリップ感覚とともに神の啓示のようなひらめきを得る。その映像には人工知能に関する画期的な理論が隠されていたのだ!

 そこから主人公は、ビデオ解読のため、沖縄の離島に渡りイルカの生態研究に挑むのだが、天啓に打たれた彼の興奮がそのまま読み手にも伝染し、今どきのマンガにしては細かいコマ割りも一気に読ませてしまう。天才数学者とイルカという組み合わせに深遠なイメージが喚起され、誇大妄想気味の野望と満たされない現実とのギャップに焦燥を感じる主人公の姿には、正統的な青春ものの匂(にお)いもする。

 舞台は近未来だが、〈人工鰓肺(さいはい)〉という水中呼吸装置が登場する以外、現代とさほど変わりはない。SF的要素を盛り込みながら、リアルな生活感も失わず、クセ者の漁師やイルカと交感する謎の女など、キャラクターも魅力的だ。

 作者はなんと現役の文化人類学者(富山大学助教授)。名古屋大学で生物学、京都大学大学院で動物学専攻という経歴もあり、なるほど納得。物語はまだ序章だが、星野之宣、鶴田謙二、幸村誠あたりが好きな人ならハマること請け合いである。

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