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コミックガイド

リアルワールド [原作]桐野夏生 [漫画]イシデ電

[掲載]2007年04月15日
[評者]山脇麻生

 現実の自分を受け入れることが出来ず、孤独と焦燥にかられる青春を描いた桐野夏生の小説を、期待の新鋭・イシデ電がコミック化した。異色のタッグを成立させたのは、文学と漫画の融合を目指して立ち上げられた新レーベル「IKKI COMPLEX」だ。

 光化学スモッグ注意報が発令された夏の日、名門高校に通う少年が母親を撲殺して逃走した。ひょんなきっかけから、携帯電話を通じて逃げる少年・ミミズと繋(つな)がった女子高生・山中十四子とその友人たちは、犯人の逃走に自ら巻き込まれてゆく……。

 章ごとに各人の視点で語られる逃亡劇。その中で浮き彫りになっていくのは、一見どこにでもいる高校生の心の闇と関係性の脆(もろ)さだ。複雑で実体のない現実。そんな脆い“リアル・ワールド”は、それぞれの思惑やちょっとした思い付きから、彼らが意図しない悲劇のクライマックスへと加速してゆく。作者によって徹底的に追い詰められ、その先に踏み込ませられた小説中の登場人物同様、勢いのある描線で表情豊かに描かれた本作のキャラクターが、怒濤(どとう)の展開に押し潰(つぶ)されそうになってゆく様は相当の熱量。心象風景を表す画法も効果的だ。

 切なく、ヒリヒリした痛みを伴う作品だが、小説に真っ向から対峙(たいじ)した漫画家の真摯(しんし)な姿勢には好感がもてる。十四子が、自分を閉じ込めていた殻を破るラストもいい。

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