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コミックガイド

エンブリヲ [作]小川幸辰

[掲載]2008年03月09日
[評者]南信長

 虫なんか見たくもない、想像するだけで鳥肌が立つという方は読まないでください。気絶するほど気持ち悪いから。というか、私だって虫は嫌いだ。思わず本を閉じたくなる場面も多々あった。それでも最後まで読んでしまったのは、物語の吸引力ゆえである。

 主人公は生き物好きの高3女子。それも犬猫のレベルじゃない。威嚇ポーズのカマキリに〈うーん/いとおしい〉とほおずりし、ゴキブリの腸細胞を顕微鏡で見て〈うわあきれい!〉と感嘆する“虫愛(め)づる姫”だ。そんな彼女が、ある日、森の中で奇妙な虫に首筋を刺される。以来、彼女が通う学校で生徒らが虫の大群に襲われる事件が続発。一方、彼女の体にも徐々に異変が……。

 生物の進化と多様性、種の保存本能、環境と生態系といったテーマを下敷きにした高密度なホラーサスペンス。リアルな虫の描写に加えて、惨劇シーンも遠慮なく描かれ、胆力を試される。それでいて主人公の少女には無垢(むく)な透明感があり、ある種のエロチシズムすら漂う。さらには、いじめの陰湿さや学校の閉鎖性をもあぶり出す。

 タイトルは「胚(はい)」「胎児」といった意味で、響きと相まって作品世界を象徴する。初出は10年以上も前。が、人物の絵柄にやや古さを感じるものの、グロテスクでありながら最終的に「生命とは何か」を考えさせられる物語は、時の経過に耐えうる強さと深さを備えている。

    ◇

 95年刊行作品の新装版。

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