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インドへ馬鹿がやって来た [作]山松ゆうきち

[掲載]2008年4月6日

  • [評者]南信長

 あの島耕作も注目するほど急成長を遂げているインド経済。本書も、規模は極小ながら、インドでのビジネスチャンスに挑む男の姿を描いた実録コミックだ。

 といっても、「プロジェクトX」的感動物語とは違う。仕事に窮した56歳の漫画家(=作者)が、インドで日本のマンガを翻訳出版しようと思い立つ。インドにはマンガがないから〈無い物は売れるに決まっている〉というのが彼の理屈だ。そこで選んだ作品が、なぜか時代劇。しかも、本人はヒンディー語も英語も話せず、現地に何のツテもない。そのうえ辛いものが苦手ときた。それなのに、単身インドに乗り込んでしまうのだから、無謀としか言いようがない。

 ところが彼は、己の信念に微塵(みじん)の疑いも抱かず、目標に向け邁進(まいしん)する。サンダルを買うのも一苦労のくせに、翻訳者を探し、訳したセリフをパソコンで打ってもらい、印刷所と交渉するバイタリティーは驚異的だ。

 すべてが大雑把で約束も守らない“インド式”とのバトルも含め、心身ともに相当キツかったはずである。が、その筆致は、ツラいはずの獄中生活を淡々と描き、それゆえ真実味を感じさせた花輪和一『刑務所の中』のごとく、現地の生活感覚をリアルに伝える。ここまで無謀でも大きなトラブルがなかったのは、作者の人徳と胆力の賜物(たまもの)だろう。自分探しでインドに行き、「人生観が変わった」とか言ってる若者とは土性骨(どしょうぼね)が違う。

    ◇

 書き下ろしエッセーとインタビューを特別収録した。

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インドへ馬鹿がやって来た

著者:山松 ゆうきち

出版社:日本文芸社   価格:¥ 1,575

表紙画像

刑務所の中

著者:花輪 和一

出版社:青林工芸舎   価格:¥ 1,680

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