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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>コミックガイド> 記事 コミックガイド 月は何でも知っているかも [作]朝倉世界一[掲載]2008年04月27日 表面的な流行を追った結果、皮肉にも1年もたたずに“古さ”を感じさせ、途端に興味を消失させてしまうモノがある一方、時を経るごとに独特のアジを醸し、年を重ねた持ち主を新たな視点で楽しませてくれるモノがある。 圧倒的なオリジナリティーで、比類なき作品を発表し続けてきた著者の短編作品集内の一編「ターナーさん ありがとう」に登場するバイクは後者だ。英国バイク産業界に輝かしい軌跡を残したE・ターナーによる1960年代製のトライアンフは、現在、海を渡って東京に居を構えているが、時速80キロメートルを超えると変な音がして、いとも簡単に後続車に抜き去られてしまう。そんなバイクにまたがり、星空を見上げながら著者は思うのだ。このまま「ぷらっと宇宙にいければいいのに」と。 ガソリンタンクってなんとなくロケットに似ている。それに、スピードが持つ万能感! バイクで大気圏突破なんて、たやすいことじゃないか……自然とそう思える、心地よい風のようなリズム。けたたましい騒音を残して爆走するバイクではなく、「遠くへ行きたい」という純粋な欲求を満たしてくれる相棒に対する愛情。わずか18ページの短編に溢(あふ)れるその温かなまなざしに、読み手は静かにノックアウトされてしまうのだ。字数の都合で、他の作品には触れられなくなってしまった。けれど、この一編だけでも本書を手にする価値はある。 ◇ 「月刊コミックビーム」掲載作などを収録。
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