|
ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>コミックガイド> 記事 コミックガイド ルート225 [原作]藤野千夜 [画]志村貴子[掲載]2008年05月04日 いつもの道をいつものように歩いていたはずが、気がつくと見知らぬ街に迷い込んでいた中学生の姉弟。何とか家に帰り着くも、なぜか父母の姿はなく、学校の友達もどこかが微妙に違う。そう、まるでパラレルワールドに来てしまったかのように……という導入部は、いかにもジュブナイルSF風。 が、そこからSF的展開を期待すると、肩すかしを食う。もちろん2人は元の世界に戻る方法を探す。そのカギを握るアイテムも登場する。けれど、明快な答えはない。本作で重要なのは、謎解きではなく、2人が感じる“世界に対する違和感”そのものなのだ。 心理学で「境界人(周辺人)」という用語がある。ある社会集団から別の集団に移る際、新たな規範にすんなり適応できず、どちらの集団にも完全には属さない人間のことで、どっちつかずの不安定な状態から焦燥感や過剰な自意識を抱きやすい。大人と子供の中間にある青年期の若者もその一例。本作は、そんな境界人の不安と成長を描き、優しい余韻を残す。 志村貴子は、代表作『敷居の住人』で大人と子供の狭間(はざま)で揺れる心理を丹念に描き、連載中の『放浪息子』では女になりたい少年と男になりたい少女を主人公に据えている。一方、原作の藤野千夜は、性同一性障害を公表している作家。そしてまた志村の洗練された巧みな筆致は芥川賞作家に十分伍(ご)する。この絶妙かつ幸福な出会いを見逃す手はない。 ◇ 「月刊少年シリウス」掲載作品を収録。
ここから広告です 広告終わり コミックガイド バックナンバー
|
ここから広告です 広告終わり 売れ筋ランキングコラム
|