[掲載]2008年5月11日
殺人事件で兄を失った少年が、その謎に迫っていくミステリードラマだ。彼は、かつて兄とコンビを組んで「戦闘」をしていたという男・草灯(そうび)と出会い、兄の謎めいた一面を初めて知る。2人は事件の関係者を追い、やがて「言葉(スペル)」を操る不思議な戦闘の世界に巻き込まれていく。
どこか異化されたこの世界で、戦う者は必ずコンビを組み、同じ「本当の名前」を持ち、運命の絆(きずな)で結ばれている。しかし主人公と草灯は名前が異なったままコンビとなり、戦いに身を投じる。異なる者同士に、一体どんな絆が成り立つのか。そんな2人の心の距離を軸に展開されるドラマは、日常を舞台にしつつも、エキセントリックで妖艶(ようえん)なイメージの交錯する世界が流麗な絵柄で描き出され、思わず幻惑される。だが、物語も流麗に展開するかというと、必ずしもそうではない。むしろ錯綜(さくそう)しながら、何かを手さぐりするかのように、じっくり進む。
読者によっては、少しとまどうかもしれない。しかし読み進むうちに、作者が確実に何かと戦いながら、作品と向きあっていることが伝わってくる。
多くの迂回(うかい)を経て、複雑な様相を描いた先にこそ、はじめて浮き彫りにできる、まっすぐでシンプルなもの。そんな困難な格闘を作者は続けている。その戦いは、確実に何かをとらえ、はっきりと実を結びつつある。佳境に突入した物語の今後が楽しみだ。
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「月刊コミックZERO−SUM」連載中。
著者:高河 ゆん
出版社:一迅社 価格:¥ 580
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