[掲載]2008年8月10日
ギャグマンガの神様、赤塚不二夫が亡くなった。その業績は今さら語るまでもないが、赤塚の場合、作品のみならず破天荒な私生活自体がギャグだった。強烈な逸話の数々に「こんな大人がいていいのか!」と畏敬(いけい)と憧憬(しょうけい)の念を抱いたものだ。とはいえ、それがもし自分の父親だったら、ちょっと困ったかもしれない。
本作は、まさにそんな“ちょっと困った”父親の死と、残された者たちの物語だ。放蕩(ほうとう)の限りを尽くして死んだ徳造の家に遺品整理のため集まった3人の子供と1人の孫。ガラクタばかりの遺品の中から発見されたビデオテープには彼の遺言が録画されていた。アロハ姿の徳造が得意げに披露した遺産は、なんと1億円。ただし〈遺産分配はダーツで決めること〉というのが条件だった。
死後も人騒がせな父に呆(あき)れる子供たち。しかも、なぜか近所の年寄り連中が家に居着いてしまい、さらには徳造の愛人と名乗る女、元プロ野球の大投手など、妙な人物が次々にやって来て……。
大人げない大人たちが繰り広げるドタバタ劇は、洗練された吉本新喜劇のよう。設定や展開は一種のファンタジーだが、人生とは意外とこんなものなのかも。一方で、本作は人と人を結び付ける場、記憶の集積装置としての「家」の物語でもある。
徳造や赤塚のように生きて死ぬのは難しい。が、人生を楽しもうとする彼らの姿勢は、大いに見習うべきだろう。合掌。
◇
週刊「モーニング」掲載作品を収録。
著者:宮本 福助
出版社:講談社 価格:¥ 680
ここから広告です
広告終わり