[掲載]2008年9月28日
またしても“漫画家マンガ”の快作の登場だ。主人公は、漫画家をめざす女子高生・くるみ田小鳩。初めて描き上げた作品を憧(あこが)れの『少女ドリーム』編集部に持ち込むも、容赦ないダメ出しに打ちのめされる。それでもめげずに持ち込みを繰り返す小鳩の奮闘を中心に、漫画家志望者&大御所漫画家&編集者たちが抱くマンガへの情熱を、ギャグとシリアスを織り交ぜつつ描く。
一見ベタな設定で浮世離れしたキャラクターが演じる素っ頓狂なギャグとは裏腹に、マンガについて語られるセリフは極めてリアル。無理して今風の絵を描こうとする大御所作家への辛辣(しんらつ)な批評、マンガ誌における作家の序列、編集者と漫画家の力関係など、見ているほうがハラハラするほど生々しいシーンが続出する。一方、『少女ドリーム』主催の漫画スクールで語られるマンガ論は、実際の漫画家志望者にも参考になるだろう。
そして何より彼ら、彼女らの心理描写が胸に迫る。平凡な人生を送ってきた自分が人を感動させられるのかと弱気になりながらも、新人賞応募作を必死で仕上げる小鳩が味わう恍惚(こうこつ)感。その小鳩のファンレターに救われる大御所漫画家。小鳩のライバルでコンプレックスをバネに漫画家への階段を駆け上がる美雪、知識は豊富だが描く才能には恵まれていない漫研部長・谷。それぞれの気持ちを丁寧に拾いつつ、笑い泣きさせる作者の筆力とマンガ愛はハンパじゃない。
著者:藤野美奈子
出版社:メディアファクトリー 価格:¥ 924
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