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電子書籍、作家の思いは 読者広がる期待と紙への愛着…

2010年11月18日

 新しいメディアと目される電子書籍に、作家たちが態度を鮮明にし始めた。「新宿鮫(しんじゅくざめ)」シリーズの大沢在昌さん、「亡国のイージス」で知られる福井晴敏さんが電子書籍への「参戦」を新たに表明。村上龍さんはすでに電子書籍制作・販売会社「G2010」の設立を発表している。読者との新しい出会いの場になるという期待の一方、紙の本へのこだわりを持ち続ける作家もいる。

■内容をどんどん更新

 「いま電子書籍は、話題として起爆力がある」。大沢さんは角川グループと組み、12月に新作「カルテット」電子版を先行発売する。「電子と紙、映像化と膨らませ、何でもやろうぜと思った」。その後に紙の本を出し、年明けにはテレビドラマ化される。

 福井さんは来春をめどに、経済小説「人類資金」を講談社から電子書籍で出す。月1回が目安の「連載」で、配信済みの内容を経済情勢などに応じて修正する。一度購入すれば更新版も無料で読めるようにしたいという。「電子の利点は即時性。どんどん更新できる。永遠に完成しない小説になるかもしれない」

 村上さんは「出版社は紙の本を作るプロがそろっているが、電子書籍はITベンチャー企業と組む方が機動力のあるコンテンツ(作品)を作れる」と言う。電子版「歌うクジラ」は坂本龍一さんの音楽や映像を付けるなどリッチコンテンツ化し、1万ダウンロード以上を記録した。自作はすべて、この会社で電子書籍にする。同社からは瀬戸内寂聴さんが未発表作品を、よしもとばななさんがエッセー集を出す。

■海賊版懸念で電子化拒否も

 ただ、電子化は「ケース・バイ・ケース」という作家もいる。代表的なのが宮部みゆきさんだ。新刊「あんじゅう」の中の1編を、8月にiPad用の電子アプリとして中央公論新社から出したとき、出版界では驚きの声が出た。紙の本と書店への愛情を常々語っている作家だったからだ。

 宮部さんは、こう説明する。「電子版を出したのは南伸坊さんのイラストが動いたり、本文がスクロールしたりする別の商品だったから。基本的には紙の本で出したい思いは変わりません。紙の本は手に収まり、魅力的な世界が入っているから」

 宮部さんは一方で「弱視者の方や高齢者のために文字を大きくできる」と電子書籍の利点も挙げる。

 返品がない電子書籍に期待する作家も多い。林真理子さんもその一人。ドラマ化されて人気の高い「コスメティック」「anego」と「秋の森の奇跡」の3作が小学館で電子書籍になる。電子化の理由は自著の売れ行き低迷。販売部数は昨年と比べて2割減った。「座して死を待つわけにはいかない」と言う。

 村上春樹さんや東野圭吾さんは、現時点では電子化そのものを拒否している。ベストセラー作家にとっては、電子化によって海賊版が出回る不安も強い。また「私の作品は紙の本で読んでもらいたい」と話す女性人気作家もいる。

 ただベストセラー作家と異なり、中堅作家にはなかなか声がかからない。

 デビュー作「春一番が吹くまで」で新世代の登場と注目された川西蘭さん。この本は現在、古書店でしか入手できない。「少部数の作品はどんどん読めなくなっている。作家の側もドライに考えれば、電子書籍の時代は、優秀な編集者兼プロデューサー1人と流通システムがあればいい」(西秀治、加藤修)

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