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江戸の時空間を楽しめる小説ならそれらはすべて「江戸ノベルズ」。
剣豪相討つチャンバラでも 裏長屋に咲く人情噺でも 殿様お姫様の御家騒動でも
舞台が江戸の時代なら、「江戸ノベルズ」と呼んでください。
おもしろさ、天下一品です!
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▲日本橋川をはさんで小網町と茅場町は、渡し船で結ばれていた。奥州征伐に向かう源義家が、鎧を水中に投げ入れて航海の安全を祈ったという故事から、後にこの地の船着場が「鎧の渡し」と名付けられた▲広重作「鎧の渡し小網町」は、日本橋川を下流(東)方向に見渡す視点で描かれている。左手が小網町、右手が茅場町。川を下れば、ほどなく大川(隅田川)に合流する地点だ▲日本橋川は江戸の水運を担う重要な川であった。両岸に船積問屋の土蔵が立ち並び、全国から運ばれてきた荷が陸揚げされた。折しも、茶らしき荷を満載した荷船が着いたばかりだ▲渡し船は茅場町側に渡ろうとする乗客で満員状態。船足の早い「猪牙船」が渡しの行く手を横切って、大川の方に下って行く。混雑する船の行き来に活気あふれる江戸の暮らしぶりが伝わってくる▲ツバメが飛び交う夏の日本橋川を、広重が描いてから150年。「鎧の渡し」の代わりに架けられた鎧橋の上には、いま首都高速が走る。「鎧」の故事とも縁のある「兜町」には東京証券取引所ができ、日本の金融証券市場の要となっている。
江戸城大奥で暮らす女たちの愛憎劇を通して、徳川幕府の栄枯盛衰を描いた連続時代劇「大奥」。脚本を手がけたのは、当代きっての人気脚本家・浅野妙子さんだ。時代の雰囲気をよく映し出し、当時の人々の気持ちをすんなり描けたのは、長年愛読してきた司馬遼太郎や藤沢周平らの〈江戸小説〉のおかげだと話す。そんな浅野さんに改めて〈江戸小説〉の魅力をお聞きした。

● あさのたえこ/神奈川県生まれ。94年、第7回フジテレビヤングシナリオ大賞で佳作受賞、脚本家として本格的にデビュー。主な作品は『ラブジェネレーション』『神様、もう少しだけ』『パーフェクトラブ』、NHK連続テレビ小説『純情きらり』など多数。現在放映中の『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系列)の反響も大きい。
「若者からお年寄りまで、より多くの人たちが楽しめる時代劇を書いてみませんか?」。デビュー以来数々の人気ドラマを書いてきた浅野妙子さんのもとへ、時代劇の依頼が舞い込んだ。それが2003年のテレビドラマのほか、後に映画や舞台にまでなった『大奥』のスタートだった。
「本格的な時代劇は初めてだったので、さすがに最初は不安でした。でも、何を描きたいかが見えてからは、『書ける!』と確信しました」
舞台は幕末の江戸城大奥。将軍の寵愛をめぐる「女の戦い」や大奥内での権力闘争などを、絢爛豪華に描いた。ベテランから若手まで多彩な人気女優が繰り広げるドラマチックな展開に、幅広い世代がくぎづけになった。
「時代劇であっても、登場人物たちの心理状態や心の変化を大切にしたいと思っていたんです。その結果、歴史的事実や事件を重視する従来の時代劇とはちょっと違うものになった。『時代劇のトレンディードラマ』とよく言われたのは、そのあたりに理由があるからだと思います」
以前から司馬遼太郎や藤沢周平らの歴史小説をよく読んでいたことも『大奥』の脚本を書く上ではかなりプラスになった。
「当時の人々の感覚や時代背景など、江戸時代の知識が知らないうちに蓄えられていたんですね。大奥の女性たちの言葉づかいもわりとすんなり書けちゃって、後で直さなくて良かったぐらいでした。これはもう司馬さんのおかげでしょうね(笑い)
浅野さんが歴史小説を読み始めたのは、30代に入ってからだった。
「司馬遼太郎さんの作品は読み尽くしました。中でも好きなのは『燃えよ剣』『竜馬がゆく』など幕末ものですね」
土方歳三や坂本竜馬ら、登場人物が最後に非業の死を遂げる運命にあるのを知りながら、読み進めるのが「切なくて好き」だとか。
「大志のためには自分の命さえあっさり捨てる。司馬作品に描かれている幕末の志士たちは、妙に淡々としていて清々しい。その姿がとてもはかなくていいんですよね。どんな時代でも、若者は単純に命を燃やしたいものだと思うのですが、幕末の若者たちには明確な目的があったからあんな風に清々しく生きられたのでしょうね。幕末ものに登場する男性はとにかくカッコイイ。死んでしまうという悲劇性を背負っているうえに若いから、余計に切ない気持がかきたてられる。恋人目線で登場人物を見ながら読めるというのも、醍醐味の一つなんじゃないかな」
江戸時代末期といえば、今から150年ほど前のこと。浅野さんは最近、それほど遠い昔ではないように感じているらしい。
「江戸時代の人たちは頭の上にちょんまげを乗せていても、今の私たちの気持ちとそれほど変わらないんじゃないかな。でも、その一方で幕末の志士にしろ大奥の姫君にしろ、今の私たちには到底理解できない強い役割意識や使命感も持っていたはずですよね。私が歴史小説を好きな理由は、そういう強い心を併せ持つ人々やその心が描かれているからだと思います」
時代劇・現代劇にかかわらず、ピンとくる企画であれば、どんどん脚本を書きたいと話す。
「ドラマの脚本って、自分が描きたい情念を描くために、いろいろなものを利用するという感覚なんです。その点、絶対的な身分差や命がけの戦いが存在していた江戸時代は、登場人物たちの感情の起伏を大きく描けるのでおもしろい。だからこそ、江戸の人々の「心」がわかりやすく伝わるのでしょう。リアリズムをまず先に追及していく歴史小説との違いを楽しんでいただけたら、と思います」