終戦の年に生まれた人が、今年で還暦だ。長い年月が流れた。このかんの調査・取材の蓄積や新資料発見が「15年戦争」の輪郭を鮮明にしつつある。
研究者らの手になる新書群に、その感が深い。竹内修司著『幻の終戦工作』(文春新書)、中村政則著『戦後史』(岩波新書)、小菅信子著『戦後和解 日本は<過去>から解き放たれるのか』(中公新書)、佐藤卓己著『八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学』などだ。
31年の満州事変に始まり、日中戦争からアジア・太平洋戦争へ。日本はなぜ国際社会の批判にもかかわらず戦争への道を進んだのか? 保阪正康著『あの戦争は何だったのか』は戦争の「黒幕」を追う。
保阪著には『「特攻」と日本人』(講談社現代新書)もある。旧版と累計で約41万部のロングセラー、日本戦没学生記念会編『新版 きけ わだつみの声』(岩波文庫)所収のものも含め広く学徒兵の遺稿にあたり、若者を死地に追いやった心性を掘り下げる。
45年8月。広島、長崎への原爆投下の直後の14日にポツダム宣言受諾、無条件降伏。15日、天皇はラジオ放送で敗戦を告げた。この戦争で、旧日本軍人・軍属約230万人と民間人約80万人の生命が失われた。
朝日新聞社編『戦場体験 「声」が語り継ぐ昭和』(朝日文庫)、広島市/長崎市原爆災害誌編集委員会編『原爆災害』(岩波現代文庫)などが市民を巻き込んだ重い記憶を伝える。
原爆で亡くなった父の亡霊と娘が対話する井上ひさし作の舞台のビデオ『父と暮せば』(柏書房)。自身の被爆体験を伝えてきた作家林京子は今年、短編集『希望』を出した。
国内最大の激戦地には、今も大きな米軍基地が残る。始まってさえいない「戦後」を、目取真俊は『沖縄「戦後」ゼロ年』で問う。