戦後まもなく生まれの800万人が、サラリーマンなら一線を退く時期を迎えている。競争と一心同体で突っ走ってきた団塊・別名全共闘世代・社会にでてからは企業戦士が、お役ご免の今後に無聊(ぶりょう)を嘆くことなく過ごすには? 発想を転換、ゆったり生きる格好良さを教えてくれる本を選んでみた。
持田叙子著『朝寝の荷風』の永井荷風も、「J・J」の愛称で知られる『植草甚一日記』の著者も、男らしくといった一般常識を意に介さなかった。荷風は自分で食事の支度をした。J・Jはおしゃれで、69歳でベストドレッサー賞を受賞。そのポップぶりは、ガラクタみたいな雑貨も含め、彼が古書店めぐりや道中見つけた収集品が満載のコロナ・ブックス編集部編『植草甚一スタイル』(平凡社)に鮮やか。
悠然、飄々(ひょうひょう)、同時に好奇心、探求心を失わない理想のご隠居群を足立則夫著『遅咲きのひと』に見る。ほか加藤秀俊著『隠居学 The New Fifties』(講談社)は、怪しい部分もあるがちょっと物知りの落語のご隠居に少年時代から憧(あこが)れたという今75歳の社会学者が、「ホンモノの隠居」の座を手にした境地を記すエッセー集だ。
もう立ち食いそばやファストフード店で空腹を紛らす必要もないのだから男子厨房(ちゅぼう)に入ろう。家にこもりがちな仕事柄、三度のご飯を楽しみにした作家池波正太郎の『池波正太郎のそうざい料理帖(ちょう)』(料理相伴・矢吹申彦、平凡社編)が多分参考になる。著者こだわりのレシピを、料理人としても筋金入りのイラストレーター矢吹氏が視覚化。
杉浦日向子著『隠居の日向ぼっこ』に映る、穏やかに時が流れる世界の良さを見直しませんか? ネット社会の最速主義中毒から解放してくれる、カール・オノレイ『スローライフ入門』(鈴木彩織訳、ソニー・マガジンズ)のような本もある。