これから10年で、仕事からリタイアしていこうという世代に、これほど注目が集まったことはあったのだろうか。団塊の世代。年金や医療制度などの基盤を揺るがす人口構成逆転の、一方の主役たちである。
団塊世代の高齢化が深刻な社会問題を引き起こすという見方は根強い。高橋伸彰著『少子高齢化の死角』は、「高齢者は必ずしも弱者ではないという発想があるが、75歳以上の後期高齢者が急増しはじめ、事情は一変する」と警告する。小塩隆士著『人口減少時代の社会保障改革』(日本経済新聞社)は「少子化対策には期待できない。高齢者どうし助け合う仕組みを作ることが必要だ」と主張する。
欧米でもベビーブーム世代の問題が顕在化しつつある。コトリコフ他著『破産する未来』は、現大統領に至るまでの米国歴代政権と市民自身を、「問題を先送りにし、子供たちの経済的未来を危険にさらしている」と批判する。フランク・シルマッハー著『老人が社会と戦争をはじめるとき』(佐藤正明訳、ソフトバンククリエイティブ)は、世代間の争いに突入したドイツの近未来を予感する。
それでも、楽観論も出てきている。「団塊」の名付け親である堺屋太一著の『団塊の世代「黄金の十年」が始まる』と小説『エキスペリエンツ7 団塊の7人』(日本経済新聞社)は、都市に住み、まだ働く力がある高齢者の、数と知識・経験のパワーに期待する。
経済界は、購買力や投資力を当てにし、政府はまだまだ税の担い手にしておきたい存在。ただ、この人たち自身が動かないことには、未来はない。林信吾ほか著『昔、革命的だったお父さんたちへ』は、「もう一度、立ち上がるのだ。下の世代は、必ずや拍手を送り、後に続く」と書く。約10年若い世代からの、意味深な呼びかけである。