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今年の主なベストセラー。新書をはじめとする廉価本、コミュニケーションや日本語の本、「泣ける」小説、インターネット発の本などに人気が集まった
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◆自分を磨き、変える本が好調
株価が上向いてきたとはいうけれど、迫る増税、厳しい雇用……頼れるものが乏しいときに、残る答えは「自分磨き」か。ストレートなタイトルで自己表現の上手・下手を考えさせる樋口裕一『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)、昨年7月の刊行だが、今年も圧倒的な人気で累計220万部の大ヒットに。
会計学のサワリを学ぶ山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)も堂々125万部。マネーへの関心を、「そう言われると不思議だな」という身近な疑問とドッキングさせた巧みなつくりが読む気をそそった。
言葉の誤用について、マンガ入りで解説した北原保雄編『問題な日本語』『続弾!問題な日本語』(大修館書店)も、学ぶ楽しさをうまく誘って合計92万部。
お行儀にとらわれず、強い生き方を事例で示す門昌央と人生の達人研究会『ワルの知恵本』(河出書房新社)は、続編『またまたワルの知恵本』と合わせて98万部。一方、意欲・能力の不足した若者像をデータで指摘、今年の流行語ともなった三浦展『下流社会』(光文社新書)は65万部。
モテないオタク青年が見事に恋人をゲットする中野独人『電車男』(新潮社)は、マンガや映画にもなり昨年に続き絶好調、計101万5000部。関連本も多く出た。同書はインターネットの掲示板「2ちゃんねる」の書き込みから生まれたが、同じくネットで話題になり単行本化された白石昌則ほか『生協の白石さん』(講談社)は、東京農工大学の生協職員・白石さんと学生たちとの「ひとことカード」を通じた心温まる交流が人気を呼び85万部。
小説のトップセラーは携帯サイト活動を出発点にしたYoshi『「もっと、生きたい…」』(スターツ出版)の100万部。同じ著者の『恋バナ 赤』『青』(同)2冊シリーズも計113万部と、若い読者に人気を博している。
親子の泣かせる交流を描くリリー・フランキー『東京タワー』(扶桑社)、着実に売れて90万部。いじめられっ子を変身させる白岩玄『野ブタ。をプロデュース』(河出書房新社)も、ドラマ化されるなど65万部と好調だ。青木和雄・吉富多美『ハッピーバースデー』(金の星社)は97年に児童書として出た作品をリニューアル。厳しい家族関係を乗り越える人間ドラマで、50万部とよく読まれた。
ビジネス系では岡村久道・鈴木正朝『これだけは知っておきたい個人情報保護』が87万部。4月に全面施行された個人情報保護法をコンパクトに解説、類書を圧倒した。
◆『ハリ・ポタ』なく総販売額は前年割れへ
『ハリー・ポッター』最新巻の発売もなければ、社会的関心を集める大きな出来事もほとんどなし。全体的には波静かな年だった。
「ハリ・ポタなし」の影響はてきめんに表れた。出版物の年間販売額は前年割れに逆戻りするのが確実だ。出版科学研究所によると、今年1〜10月の推定販売額は、1兆8422億円で前年同期に比べて1.6%減っている。内訳は書籍が7885億円で同2.2%減、雑誌が1兆537億円で1.2%減だ。
書籍では読者の廉価本志向がいっそう進んだ。大手取次会社の日販、トーハンの年間ベストセラーの総合上位20点を見ると、1位の『頭がいい人、悪い人の話し方』をはじめ、税込み1000円以下が9点も。500円本の出版が活発になるなど、出版社もこうした読者の志向に対応している。
珍しい現象だったのは、『星の王子さま』の新訳ラッシュだ。日本での著作権が1月に切れ、岩波書店の独占的な翻訳出版権も消滅。これに伴い、倉橋由美子訳の宝島社版、池澤夏樹訳の集英社版など10点近くが出て、翻訳の競演となった。
読書の環境づくりの面では、文字・活字文化振興法が7月に成立、施行された。ただ、具体的施策はこれから。資料費が削られる一方の図書館をどうするのか。“改革”を言うならここにこそ、と望みたい。
一方、大学生の読書推進で大きな動きが出てきた。大学生協の「読書マラソン」だ。読んだ本の感想を提出するたびにカードにスタンプを押してもらい、10個たまると書籍購入割引券などのごほうびがもらえる、というのが基本的な仕組み。実施大学は今年、100を超えた。また、秋には学生たちが出版企画をアピールして競い合う大学生の手作り公開イベント「出版甲子園」も開かれた。
表現の自由、出版の自由をめぐっては今年も出版界に厳しい動きが続いた。
漫画本『蜜室』をめぐるわいせつ裁判の控訴審では、罰金に減刑されたものの被告の出版社社長が一審に続き有罪に。半世紀も前のチャタレイ判決をほぼ踏襲したこの判決には、漫画家や出版関係者から「表現の取り締まりにほかならない」と批判が出た。被告は上告し、舞台は最高裁に。性表現も社会通念も大きく変化してきている中で、なお従来のわいせつの定義、基準が維持されるのかどうか。
また、戦時中最大の言論弾圧事件といわれる「横浜事件」の再審が始まった。評論家や出版社の編集者らが旅館で開いた宴会が「共産党の再結成のためだった」とみなされた事件。その再審の扉がやっと開いた年に、話し合っただけで罰せられる危険性が指摘される共謀罪を新設する動きが浮上してきた。戦後60年。過ちを繰り返すまい、と再出発したはずのこの国の断面だ。