警察で、学校で、IT(情報技術)企業で、ファイル交換ソフト「ウィニー」による情報流出が相次いでいる。インターネットが普及して、さまざまな恩恵が享受できるようになった一方で、負の側面も浮上してきた。書店でもIT関連のビジネス指南書や成功者伝などが並ぶなか、「ネット社会」の将来を見据えた本が目につく。
2月の刊行以来、20万部を超えた梅田望夫『ウェブ進化論』はITの革新による「チープ革命」、とくに無償の情報共有ツールである検索エンジン「グーグル」やブログなどのネット世界が、旧来の社会秩序や知的権威に再編を迫る現状を丁寧に紹介。それを「革命」といい、希望と痛みが交差するウェブ時代をいかに生きるかを示唆する。「革命」を推進するグーグルの興隆についてはジョン・バッテルの『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』(日経BP社)に詳しい。
元新聞人でブロガーのダン・ギルモアによる『ブログ』も、個人メディアであるブログの普及が、新聞やテレビなど従来の既存メディアのあり方に変更を迫り、ウェブ時代の劇的な変化が後戻りできないことを伝える。
宮台真司らによる鼎談(ていだん)集『ネット社会の未来像』は「忍び寄る監視(かんし)社会」や「ウィニーと著作権」「ホリエモンとメディア」など近年、ネット社会と現実社会をめぐる諸問題を多角的に議論する。帯にうたう「サイバー世界には何でもある。だけど、人の心だけはない」は意味深長だ。
とはいえ、どんな便利なツールも、使うのは人間だ。リアルな日常世界に生きるAV女優や弁護士、保育士や国会議員など、「情報化の波に乗ったり溺(おぼ)れたりの200人の生態!」を文と絵で面白おかしく描いた川畑英毅・野村タケオの『ITな人びと』は、「電子の世界」に疲れた頭をしばし休めてくれる。