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藤沢周平 生きづらい世の同伴者として

[掲載]2007年02月11日
[評者]大上朝美

今年は、藤沢周平さんが69歳で亡くなって10年。映画の人気に加えて本がさまざま出版され、人と作品の底光りするような魅力を改めて伝えている。

写真朝日ビジュアルシリーズ・週刊「藤沢周平の世界」

 藤沢さんのデビュー以前の作品14編が昨年見つかり、話題になった。それが『藤沢周平 未刊行初期短篇(たんぺん)』として刊行された。古代エジプトものなど思いがけない題材も手がけ、後年の短編の完成度を知る読者からは、修業の途上をかいま見るようでもある。ただ、作品を覆う「溟(くら)さ」は、紛れもない。

 高橋敏夫著『藤沢周平という生き方』は、それら初期短編も含めて作品をたどり、藤沢作品の基調を「苦しみと悲しみの交感」あるいは「鬱屈(うっくつ)の交感」だとする。読者は登場人物たちのしずかな交感に心をうたれ、「やがてこの交感が、わたしたち読者ひとりびとりと、藤沢周平の物語とのあいだのものでもあるのに気づく」。そして、生きづらい世を生きる私たちの背中を押してくれる、と。

 『海坂藩大全』上・下(文芸春秋)は、直木賞受賞作「暗殺の年輪」以来の「海坂もの」といわれる21短編を収録している。「海坂藩」はもちろん架空の藩だが、お家騒動の暗闘に明け暮れ、解題の阿部達二氏が「幕府に知れたら忽(たちま)ちお取潰(とりつぶ)しにあうべき乱脈の藩」というのももっともで、面白い。

 「藤沢周平」と、本名の「小菅留治」の間を描くのが、一人娘、遠藤展子著『藤沢周平 父の周辺』(文芸春秋)と、『父・藤沢周平との暮し』の2冊だ。家で、規則正しく生活し、職人のようにひたすら小説を紡いでいた「頑固(カタムチョ)な」父の姿は、藤沢作品の世界そのものではないか。

 朝日ビジュアルシリーズ・週刊「藤沢周平の世界」は、作品そのものと、作品の舞台から迫るグラフ誌。江戸や海坂がよみがえる。

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