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柔軟な発想 思考モデルで常識の壁超える

[掲載]2007年02月25日
[評者]加藤修

 右翼と左翼あるいは保守と革新といった戦後の枠組みから個人のライフモデルまで、古いものさしが効力を失っている。新たな時代の見取り図を自ら描くために、柔らかな発想にふれてみよう。

 船曳建夫さんの『右であれ左であれ、わが祖国日本』は、16世紀以降の日本のありかたを「国際日本」「大日本」「小日本」という三つのモデルでとらえ、日本を取り巻く中国、ロシア、アメリカの三勢力との関係のなかで分析していく。歴史観というより、文化人類学者らしい思考モデルを使った鮮やかな現状分析で左右それぞれの硬直した議論を乗り越え、日本の国益の最大化を目的に国家を論じていく。

 中沢新一さんの『三位一体モデル』は、奔放な思考モデルの楽しさを味わわせてくれる。キリスト教の三位一体説をもとに、秩序を作り出そうとする父(神)と、その秩序を人間世界に伝える子、増殖・拡大していくものとしての精霊という三分類で経済活動などを読み解く。三分類の構造で世界を見ることは、柔軟な発想を生む思考訓練になりそう。

 常識とされてきた考え方が失われた時代を生きることは、未知の土地を調べるフィールドワークに似ているのかもしれない。佐藤郁哉さんの『フィールドワーク 増訂版』では「社会や文化あるいは人間存在という複雑な対象を丸ごととらえようとする」調査のあり方を紹介している。社会や文化をとらえるモデルをいくつも作り、使い分けることで、全体像に近づこうとする態度は現実社会にも応用がきく。

 実践的に発想力をつけるテキストならば、竹内薫さんの『仮説力』が読みやすい。観測、実験、仮説、検証という科学の研究スタイルを、ビジネスを含め日常にも応用することを勧める。自らが誤る可能性を自覚することこそ、硬直化しない発想の極意だろう。でも、実はこれが一番難しい。

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