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ここから本文エリア 話題の本棚 警察小説―市民の目は厳しく、プライドは健在か[掲載]2007年10月21日 止まらない警察官の不祥事、あちこちで発覚する裏金、不適切な捜査手法……。この10年、警察を見る市民の目は厳しさを増している。小説の世界でも汚れた街を行く気高き騎士のような刑事は姿を消し、警察組織のひずみを物語にすることが増えた。 『悪果』は大阪の暴力団担当の刑事の姿を描く。「警察官は三とおりある。ごますりの点取り虫と、まじめなだけのボンクラと、ほんまもんの捜査ができる本物(モノホン)の刑事や。おれは本物のマル暴担やぞ」とうそぶき、賭博などの事件の逮捕者を業界紙の記者と組んでゆするのをシノギとしている。典型的な悪徳警官がそれでもプライドを持って言う「ほんまもんの捜査」に重い現実感が浮かび、憎みきれない。 『越境捜査』は警察組織の裏金を物語の軸にすえる。12億円をだまし取った男が金とともに消され、その金が県警の裏金になっていたという事実をつかんだ刑事が、警察組織全体に及ぶ利権の構図を明かしていく。正義と良心を信じる刑事の存在によってゆがんだ組織の異常さを際立たせている。 ベテラン作家のこぶしのきいた『悪果』も大藪春彦賞作家の構想力を生かした『越境捜査』も、警察の不祥事をもてあそぶだけのものではない。信用を失い傷だらけの警察組織の本質と向きあい、受けとめようという志は、文芸評論家の池上冬樹さんが「警察小説の記念碑」と評する『警官の血』につながる。戦後すぐに警察官となり地域に親しまれた駐在所長と、60年代末に警官となり過激派の潜入捜査をさせられたその息子、警務部の手先としてマル暴担当の刑事の内偵をさせられるその孫――。祖父と父の死の真実を3代目の警察官が解き明かす。 花盛りの警察小説で裏金や癒着の生々しさに疲れたら、ギムレットでも飲みながら新訳の『チャンドラー短篇全集』などいかが。
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