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読んで味わう 手作りのぬくもりに食欲そそられて

[掲載]2008年03月09日
[評者]中村真理子

 春はキャベツ、いや、タケノコもいい。手作りのぬくもりが伝わる料理エッセーが豊作だ。日々の食が言葉になると、その人の生活、そして心模様までにじみ出る。さあ、読もう、食べよう。

 芥川賞作家が思いつきで料理する『豚キムチにジンクスはあるのか』は一人暮らしの自炊エッセー。「力(ちから)パスタ」は焼いた餅にイカスミソースをあえてパスタをまぜるだけ。見た目は真っ黒、でも味は大成功、らしい。ピザトーストの具をいためた「へっぽこナポリタン風ソース」略して「ヘナッポ」は力パスタに、オムレツにと大活躍する。応用編はさらにエスカレートしてヘナッポ餃子(ギョーザ)に。4、5日はずっとヘナッポづくし。はじける楽しさが味わえる。

 煮豆がおいしくなるのは30歳をすぎてから、と始まる『おとなの味』の1編「乾いた味」は、女3人、イッパイやりながら乾物に思いをはせる。戻ることも進むうち、と教えてくれる乾物の間合いは若いときにはわからない。どんな食材も平松洋子さんののどを通れば短編集のように美しく響く。新刊『夜中にジャムを煮る』(新潮社)も身近な幸せが詰まって、どちらもしっとりした味わい。

 変わったところで、自民党の伊吹文明幹事長が本を出している。デパ地下で買った桜鯛(さくらだい)を三枚におろし、今日は刺し身、明日は一夜干し、と楽しむそうだ。びわを煮る、桜の花びらの塩漬け、といぶき亭にはこだわりの手料理が並ぶ。

 椎名誠さんの本は大胆で勢いのある味。『玉ねぎフライパン作戦』はフライパンでもやしいため、敦煌でラクダの踵(かかと)、ナイターのお供にのり巻き、イヌイットと食べるアザラシ、といえめしと旅めしのギャップが壮大だ。時々まずいめしが出てくるのもいい。決めぜりふはこれ。「男が本当にうまいものを口にしたときに言葉はない」

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