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映画の昭和 伝わる空気に思いは尽きず

[掲載]2008年03月23日
[評者]大上朝美

 昭和レトロを企図して、どんな精巧なセットを組み、CGを駆使しようと、あのころの映画に映った空気を再現することはできない。ひととき、映画に昭和を見る、そんな本を探ってみた。

 『小津ごのみ』は、昭和を代表する小津安二郎監督の作品にひかれる著者が、ファッションやインテリアなど、趣味の面から徐々に、個人的に「小津映画」を論じていく。「好み」は俳優のたたずまいから障子や建具、手ぬぐいにいたるまで貫徹しているのを具体的に指摘し、同じ小道具をいくつかの映画に見つける著者の「見つける目」にも感心する。

 『映画の中の昭和30年代』は、副題がずばり「成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活」。女性を描いた16本を、「銀座化粧」(51年)から「娘・妻・母」(60年)まで年代順に見ていく。面白いのは、映画に「時代と生活」を読み取り、鋭敏に感応しながらも、片岡義男的合理性の論理では解けないストーリー展開に違和感を隠そうとしない点だ。

 同じ著者のもう一作『一九六〇年、青年と拳銃』(毎日新聞社)は、赤木圭一郎主演「拳銃無頼帖(ちょう)」シリーズ4作を詳細に読み解く。こちらは、日活アクションの論理のむちゃくちゃさも俳優の魅力が補ってあまりあるようで、ほほえましく読める。

 次は黒沢明。『蜥蜴(とかげ)の尻(し)っぽ』は、裏方として黒沢監督を支え続けた著者が戦後を振り返り、伊丹万作、井伏鱒二ら大切な人々との出会いを語る。映画黄金期の熱気を肌で知る人ならではの迫力がある。

 そして『愛すればこそ』は、小津、成瀬、黒沢に加え、溝口健二、衣笠貞之助、川島雄三……まだまだあまた、昭和を彩る名監督たちに愛された女優・香川京子の飾らない語りをもとに、戦後の映画をたどる。一つのシーンから、引き出される思いは尽きないのである。

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