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ここから本文エリア 話題の本棚 異界への扉 夢とうつつを行ったり来たり[掲載]2008年04月27日 春眠暁を覚えず。夜明けに気づかないまま眠り続けてしまうような、おぼろげな日々には、夢とうつつを行き来する本が、大変心地よい。 『深泥丘(みどろがおか)奇談』は、淡々とした日常がふいに「ぐらああっ」と揺れる連作短編集だ。病院の壁の染みが醜い顔に見え、口のような亀裂から「ちちち」と声が聞こえる「顔」。降り続く雨に人々は「良くない」と繰り返し、こそこそと「あれ」を相談しはじめる「長引く雨」など。カバーをはずせば表紙の裏が表になって……。祖父江慎氏が仕掛けた奇妙な装丁にもぐらぐらっとしてしまう。 語り継がれた昔話には不思議がある。『昔話の旅 語りの旅』はおじいさん、おばあさんの語りを丁寧に再現する。「とんと昔があったげな」「むがし、あったづぇな」。始まりを告げる懐かしい響きが異界への扉だ。死んだ女房の首が亭主恋しとどこまでもついてくる「女房の首」は、内容が奇っ怪なだけでなく東北や九州、インドネシアにも類似した民話があったという、広がり方も不思議なのだ。 江戸の読本挿絵を集めた『奇想の江戸挿絵』は面妖な図版100点に目を奪われる。薄墨の技法で異界の鬼たちを描いたり、太くうねる線で地獄の炎を表現したり。葛飾北斎らの精密な筆致がグロテスクな題材さえ幻想的に見せてしまう。 『神と怨霊(おんりょう)』は哲学者、梅原猛氏が思うままに語ったところ神と怨霊の話になった随想集。歌道・文学の柿本人麻呂、学問の菅原道真、演劇の世阿弥、茶道の千利休。みんな非業の死を遂げて怨霊となり、神になった。「学問や芸術は怨霊によって永遠になる」という言葉のあとに、こうまとめる。「日本において、学問や芸術に携わる人間は彼らを深く尊敬し、いざというときには彼らの如(ごと)く怨霊になるという覚悟が必要であろう」
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