[掲載]2008年6月8日
将棋の名人戦が佳境を迎えている。深遠な芸と勝負術を見ていると、棋士の脳内をのぞいてみたくなる。日進月歩の脳科学は才能をどう解明してくれるのか。関連本を集めてみた。
『イチローの脳を科学する』は、幼少期からの絶え間ない練習により、脳内の神経細胞が発達し、神経回路が強化され、意識しなくても体が自然に動くようになったと解説。高い目標を掲げる強い意志も脳を鍛え、発達させてきたという。脳に蓄えられた無意識の情報量の多寡がプロとアマを分けるとも。努力の積み重ねこそが才能なのだと悟らされる。
天才の創作意欲の謎に迫ったのが『モーツァルトが求め続けた「脳内物質」』。モーツァルトの曲が脳内の快楽物質「ドーパミン」を増加させるという動物実験などから、ドーパミンの減少による病気に苦しんでいた作曲家が、症状を和らげてくれる音を求め続けた結果、多くの名曲を残したと推測する。
驚異的ペースの出版が続く脳科学者の茂木健一郎氏の著作では、『芸術の神様が降りてくる瞬間』の各界の一流プロとの対話が刺激的。「三六〇度同時に体を意識」(金森穣)するといった一流ならではの言葉が、脳の働きを探る茂木とのやりとりの中で次々と飛び出す。逆に話がかみあわないのに読ませるのが『芸術と脳科学の対話』。芸術とは「本質的なものの探求、という脳の活動の延長」という脳科学者が、巨匠バルテュスに「なぜ絵を描くのでしょう」などの本質的質問を連発。戸惑いつつ切り返す巨匠。異分野間の対話は濃厚だ。
昨年の書評欄に載った『ぼくには数字が風景に見える』(講談社)や、『天才の脳科学』(青土社)など興味深い本は多数ある。06年刊行の『先を読む頭脳』(新潮社)は、名人戦に登場した羽生善治二冠の思考法がよく分かってお薦め。
著者:西野 仁雄
出版社:幻冬舎 価格:¥ 756
著者:須藤 伝悦
出版社:講談社 価格:¥ 840
著者:茂木 健一郎・町田 康・金森 穣・山下 洋輔・立川 志の輔・荒川 修作
出版社:光文社 価格:¥ 1,575
著者:バルテュス・セミール・ゼキ
出版社:青土社 価格:¥ 1,995
著者:D. タメット
出版社:講談社 価格:¥ 1,785
著者:ナンシー C.アンドリアセン
出版社:青土社 価格:¥ 2,310
著者:羽生 善治・松原 仁・伊藤 毅志
出版社:新潮社 価格:¥ 1,365
著者:セミール ゼキ
出版社:日本経済新聞社 価格:¥ 3,675
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