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作家の生き様 言動や行動、文章に人生の機微

[掲載]2009年3月29日

  • [評者]西秀治

 人間を深く見つめて物語るのが作家だが、その作家自身の生き様を描いた本が相次いでいる。言動や行動、文章には人生の機微がにじみ出ている。

 『漱石のマドンナ』は、1916(大正5)年に49歳で永眠した夏目漱石が熱愛した女性を探った。「漱石の熱愛を解く鍵は伊香保にある」とミステリー仕立てで、「状況証拠だけにしぼり込み、漱石の行動と感情を大胆に推理」して、ある女性が相手だと結論づける。漱石はこの女性に対して「生涯プラトニックラブを貫き通し、愛を完全に封印した」という解説に、明治の男の気骨を見る。

 『与謝野晶子』はワーキングマザーとしての側面に注目した。1942(昭和17)年に63歳の生涯を閉じた晶子は13人の子を産んだ。著者は「夫とうまく行かないことや、心の通わない子どもとの関係に悩むことがあっても、晶子はずっと、男女が同じように家事や育児にかかわる大切さ、女性が働いて自立する誇らしさについて書き続けた」と語る。

 1948(昭和23)年に59歳で死去した菊池寛。『昭和モダニズムを牽引(けんいん)した男』の中に、自作『第二の接吻(せっぷん)』が映画になった際、当局から題名が禁じられたことに抗議する一文がある。「権力を有するからつて黙々として非理非道を行つていゝといふことはあるまい」。怒りとともに、文筆家としての気概がほとばしっている。

 『どうせ、あちらへは手ぶらで行く』は、07年に79歳で死去した城山三郎の最後の日録。00年に妻が亡くなったことを「淋(さび)しさは濃くなることはあっても、淡くはならない」と書き、老いとの闘いもつづられる。個人情報保護法案を推進する政治家に「国家国民のことなど毛頭考えぬ卑しい奴等(やつら)」と怒り、一方で「楽々鈍で、どんどん楽」と晩年を楽しく生きたい心境を書き留めている。

表紙画像

漱石のマドンナ

著者:河内 一郎

出版社:朝日新聞出版   価格:¥ 1,890

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与謝野晶子 (中公叢書)

著者:松村 由利子

出版社:中央公論新社   価格:¥ 2,310

表紙画像

そうか、もう君はいないのか

著者:城山三郎

出版社:新潮社   価格:¥ 1,260

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