
[掲載]2009年11月1日
■猫派vs.アンチ猫派で波乱含みに
さて、百年読書会始まって以来の「問題作」登場です。なにしろ題材が猫。賛否両論というより、好き嫌いがはっきり分かれるだろうな、これは……と思っていたとおり、まずはアンチ猫派の皆さんの声から。
〈私は猫が大嫌いです。ノラやクルツをここまでかわいいと思う百けん先生の気持ちがまったく理解できません〉(長崎県・本川れいこさん・61)
〈夫ともども大の猫嫌いの私としては、『ノラや』には戸惑い、あまり読みたくない、というのが本音でした〉(愛媛県・森井幸子さん・70)
〈猫は嫌いです。人に媚(こ)びを売るようにすり寄ってくる動作や「みゃー」という声がどうしても好きになれません。その点、犬はかわいい。犬の話だったらよかったのに〉(東京都・大津留尚代さん・67)
もちろん、猫派は正反対。
〈私のような猫好きには、たまらない作品だった。いつになったらノラは百けん先生のもとへ帰ってくるのか、ウチの猫のような気になって、思わず後ろから読んでしまった〉(東京都・西崎瀬奈さん・26)
〈「なんだ、猫がいなくなったぐらいで」と思われる方も多いかと思うが、そこが「たかが猫、されど猫」で、百けん先生のすごいところ〉(静岡県・関綾子さん・65)
さらに、長崎県のるんをさん(37)に至っては、〈この本を読んで「へえ〜」「ふ〜ん」だけの感想の人とは、仲良くなれない〉と、きっぱり……。
予想以上にくっきりとしたコントラストですが、東京都にお住まいの主婦Y・Iさん(42)の投稿には、進行係として粛然とさせられました。
〈私は猫が好きではないので、作者の気持ちが十分に理解できなかったのが残念。ここまで作者が心を奪われる猫の存在がとうてい理解できない自分の薄情さが嫌になった〉
Y・Iさん、どうかご自分を責めないでください。アンチ猫派、百けん先生のノラへの愛情に辟易(へきえき)気味の皆さんも、〈どうして本書が百年読書会に選ばれたのか理解しがたい〉(京都府・奥村正男さん・66)とおっしゃらず(厳しいご意見はありがたく拝読しましたが)、どうか最後までお付き合いください。
〈私は猫が大嫌い〉という愛知県のヒデクさん(79)は、最初は本書にただ呆(あき)れるだけだったそうです。ところが、〈この老先生の猫に対する気持ちを自分の子や孫に置き換えると、不思議なことに、あれほど不可解だった先生の涙も、喪失感からくるショックも、体調不良も、これを書かずにいられなかった気持ちから書くことで救われた気持ちまでもが、同感できるようになった〉。
また、夫君を先年亡くされたという和歌山県の大江光子さん(78)は、ご自身の体験を踏まえて〈惜別の情というものは、人間と犬や猫の場合でも同じであると痛切に思った〉と投稿を締めくくってくれました。
喜寿を超えたお二人の声、『ノラや』を読み進める際の大きなヒントになるのでは?
◇
1957年刊。愛猫の行方を案じる作家の日々。
著者:内田 百けん
出版社:中央公論新社 価格:¥ 760