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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>たいせつな本> 記事 たいせつな本 E・T・A・ホフマン『悪魔の霊酒』 逢坂 剛(下)[掲載]2007年02月18日 ■独逸浪漫派の代表作 全集完結を切に願う 創土社という中小出版社から、〈ホフマン全集〉全10巻刊行が開始されたのは、1971年秋のことだ。独文学者の、深田甫(はじめ)慶大教授(当時)の個人全訳という、気合のこもった企画だった。 当時わたしは、ホフマンやクライストなど、独逸(ドイツ)浪漫(ロマン)派の作家にはまっており、勇躍この全集を第1回配本から、購入し始めた。ところが、最初のうちこそ順調に刊行されたものの、進むにつれて配本が遅れがちになり、やがて1年に1度とか、あるいは2年に1度といった具合に、どんどん間隔が開き始めた。 そして、開始からなんと22年たった1993年、ようやく待望の『悪魔の霊液』が刊行され、全作品の翻訳が終わる。この作品は、悪魔の秘酒を飲んだために、破戒の道をたどる若き修道士、メダルドゥスの告白体の小説である。めくるめく幻想と複雑な構成は、ホフマンというより浪漫派全体の、代表作の一つといってよい。 しかし、配本はこれを最後にぱたりと止まり、最終巻となるべき第10巻、『評論・書簡・日記・評伝』が、いっこうに刊行されない。それからすでに、14年が過ぎた今もなお、未刊のままである。何か、のっぴきならぬ事情が生じて、完結がかなわぬ状況になったもの、と思われる。発刊当時、まだ紅顔の美青年?だったわたしは、今や半死の白頭翁に変わり果てた。 わが国では、ホフマンの書簡集、日記はもちろん、評伝すらほとんど出ていない。それを考えると、長い間ホフマンに傾倒してきたわたしとしては、この全集の完結をみないことには、死んでも死にきれない。どうあっても、希望を捨てる気になれないのだ。 しかるに、驚くべし、最後に刊行されたその『悪魔の霊液』が、昨年春に『悪魔の霊酒』と改題されて、ちくま文庫に復刊収録された。それによって、訳者の深田氏がご健在であることも、知るにいたった。かくなる上は、深田氏にぜひとも幻の第10巻を完成させ、たとえどんな形ででも刊行していただけないかと、この場を借りて切にお願いせずにはいられない。(作家) ここから広告です 広告終わり たいせつな本 バックナンバー
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