岡尾美代子——この稀有(けう)なスタイリストの手にかかると、雑貨であれ洋服であれ、まるで生きているように、みずみずしい表情になるのは、なぜだろう。モノ自体が持つ雰囲気とストーリーが、ひとつひとつ慈しんでスタイリングされた、ちょっぴりスモーキーな世界観の中で、ふわりと浮き彫りになる様は、まぎれもなく特別な「岡尾ワールド」で、見る者に強く訴えかける力がある。
日本人はここ数年、洋服のみならず、雑貨に対する選択眼も飛躍的に成長し、暮らしまわりは洗練される一方。柳宗理のキッチンツールも、アルフレックスのソファも、今やそこらじゅうで手に入るから、よほどセンスが悪くない限り、「趣味のいい」インテリアは無難に実現できる。ただし、そこにオリジナリティーがあるかは別だ。オリジナリティーとは、モノと真剣に対峙(たいじ)し、本質を見抜いた人だけが持てるもの。横並びのモノ選びでは、陳腐から先に一歩も進めない。
しかし、岡尾さんは20年近く、私生活でも仕事でも、モノと真剣に向き合ってきた。本書では、そんな彼女の「うちの中のもの・52点」が紹介されているのだが、わざわざ家からひっぱり出され、ふだん着のままミュンヘンで撮影されたモノたちは、ちょっと照れつつも満面の笑顔。モノって生きているんだなあ、とつくづく思う一冊だ。