「氷上のF1レース」といわれるボブスレー。花形の4人乗り(総重量630キロ以下)は2人乗りソリの場合と違って男子だけで争われる。
スイス、ドイツ、カナダなどの強豪国以外で人気が集まる理由には映画の影響も大きい。映画「クール・ランニング」(93年・米)は、88年カルガリー冬季五輪でジャマイカ・チームがボブスレー競技に挑む姿を描いた傑作スポーツ・コメディーとして広く知れ渡る。
本書の著者、ストークスは、大クラッシュに泣いたその88年大会当時の急造選手にして後のジャマイカ・ボブスレー連盟会長。アメリカの大学でMBAを取得し、大学院での専攻は金融財政学。日本流に言えば、信念、努力を語る「文武両道」の人ということになるのだろう。
実際、訳者あとがきでも、描かれているのは映画での陽気さよりもどちらかといえば「プロジェクトX」の世界と評される。たしかに氷上の戦いに勝るとも劣らぬぐらいのエネルギーが援助金調達のために費やされ、日本企業とのかかわりに関する記述まである。
淡々とした報告の文章で作品性は乏しいものの、日の当たらぬマイナー競技にかかわる人たちには大いに参考になる一冊。誇り高きジャマイカ人の著者は、「これは決して喜劇の遺産ではないのだ」と記している。