ダイエー再生。その大役を託された著者が波瀾(はらん)の人生を振り返りつつ、数々の試練で体得した“林流仕事術”を物語ベースで語る。昨年、59歳で外車販売の社長職から、ダイエーの会長兼最高経営責任者に就いてすぐの最初の著書『失礼ながら、その売り方ではモノは売れません』は営業指南的な色彩が強く、やや気負いを感じさせた。2作目は適度に肩から力が抜けた語り口がなじみやすい。
お転婆(てんば)だった少女時代。父親の青果仲買業が失敗し、アルバイトで家計を助けた。日本舞踊に惹(ひ)かれ、踊りの発表会を見つけては押しかけて素直に感動を伝え、つながりをつくった。快活で働き者。相手の懐にふっと飛び込み、誰とでも心を通わせる少女は高校卒業後、憧(あこが)れのOLになるが、女子には名刺も支給されない差別に夢破れ、転職を繰り返した。
31歳で自動車販売の世界に飛び込む。顧客の心を掴(つか)む「おもてなし」の営業で一躍トップセールスへ。41歳で外車販売に転じ、成績不良店を任されると部下の長所をほめて自信を持たせ、優良店へ次々再生させた。仕事ぶりは今も同じだ。
名作「おしん」は少女が苦難にめげずスーパーを経営するまでを描いた。「現代のおしん」。設定や状況こそ違え、そんな連想が浮かぶのは、全編を通して共感を呼ぶ著者の人間的な謙虚さと逆境をバネにする強さからだろう。