ハードカバーの帯コピーが勇ましい。「気力・体力・勇気、これが俺(おれ)の財産だ! 元気出そうぜ、負けてたまるか!」。裏表紙側には「常識破りの不死鳥伝説」とまである。
リアルタイムで知るのは、しかし今や40代以上の人たちに限られる。
プロ・デビューは25歳の年。71年秋、28歳という王座獲得時の年齢にも驚かされる。ボクシング通には、日本人未到の重いジュニア・ミドル級でのタイトル奪取が鮮烈だった。
「耳にかじりついてもベルトを取るよ」と三迫仁志会長に約束した逸話からして、ユーモリストのこの人らしい。タイソンがホリフィールドの耳をかみ切った後世の愚行にも「闘うとは、そういうことじゃありませんか」と呆(あき)れながらも理解を示す。
V6達成後、オーバーワークがたたり王座陥落。「女房に『もしも俺の脳に障害が出たら(74年の)アルバラード戦が原因だろうな』と話しているほどです」とさえ記す。タフな不死鳥たるゆえんは、リターンマッチに命を燃やしたところだ。佐瀬稔、沢木耕太郎ら名手がかつて輪島を題材に名作をものしたが、今度は“随舌”スタイルによる決定版の自叙伝。引退から30年、手だれのセコンド=構成者を得て、3度目の「王座復活」に成功といった趣だ。