国際的な賞を受けたアニメ映画「野ばら」の作者が、65歳で被爆して亡くなった自身の祖母を描いた児童文学。
日本の植民地だった朝鮮半島に父母が赴任し、小学生のケンは、長崎で祖母と暮らしている。母が迎えにきて、ケンは朝鮮半島へ。ひとり残された祖母は、ケンたちの安否を案じつつ、軍の命令で市内の別の場所へ強制的に疎開させられ、自宅は壊される。そこへ原爆が落とされる。
長崎弁を通して温かく描き出される戦時下の子どもの日常が興味深い。同時に、それが一瞬に消え、親友たちも祖母も命を失っていく情景がいたましい。
地元紙のインタビュー記事で原稿が紹介され、共感した市民たちが出版支援会を組織。さし絵と装丁にも長崎出身の美術の教員が名乗りを上げた。「戦争の犠牲になった市民にささげた原稿を、市民が出版した本」(著者)としても注目されそうだ。