著者は1956年生まれのエッセイスト。幼い頃のごはんの「ふだんの王様」だった「オムライス」がまず、登場する。
当時、母親は冷やご飯の塊を崩し、ご飯粒がパラパラしていたまったら味付けし、トマトケチャップを加えた。薄焼き卵でライスを包み、ケチャップをかけ出来上がり。「明るい黄色と、トマトケチャップの赤。トマトとスパイスの刺激的な香りと、焼きたての卵の風味が、私を急(せ)きたてた」と振り返る。
読むだけで食欲がわいてくる文章に、著者自身の手による柔らかいタッチのイラストが添えられ、ますます、味が恋しくなりそう。
カステラや水羊羹(ようかん)、カレーパン、おこわ……。家族や友人との思い出話の中に出てくる様々な食べ物が、おいしい記憶を呼び起こす。(世界文化社、税抜き1400円)