人は複雑な社会を単純に二分することが好きだ。近年は「勝ち組」「負け組」で、20余年前は(金)(ビ)だった。その(金)(ビ)が装いも新たに(モ)(キ)として登場。勝ち組の中での「勝ち組」が(モ)、勝ち組にいながら「負け組」が(キ)と、分類に複雑さが加わった。ちなみに(モ)が「ちょいモテ」、(キ)が「ちょいキモ」。商社、広告代理店、テレビ局など九つの勝ち組職種を挙げ、内部にいる人間の行動様式で、勝ち負け序列を論じる。
たとえば外資系金融。向島の高級料亭に通う(モ)がハマっているのは、支度部屋で賄い料理を食べること。対して(キ)が走る先は、ワンルームマンション投資。(モ)を旦那(だんな)気分にさせる料亭は、しっかりオモテの料金を請求書に付け、マンションは2年後には半値に下がる。と、いずれもおバカな落ちでは同じなのだが、それぞれのディテールがいかにもありそうで、笑わせてくれる。
喧伝(けんでん)される格差社会について「昔から、厳然とあった」(ヤマグチ)、「うん。もともとリッチだった人が、より目立つようになっただけ」(渡辺)と、ふたりの認識は冷めている。その上で、どうでもいいような差異をことさらに描いて、格差、格差と騒ぐ世間を笑う。そこに、このふざけた本の批評性がある。
で、十字軍を模した被(かぶ)り物顔写真のヤマグチ。「半導体部門のマーケットアナリスト」という著者が、自分を(モ)(キ)いずれかに描くのか、読んでみたい。