東京都多摩市の恵泉女学園大学では、全学生が有機農業を体験する。学生たちは種まきから収穫までを経験し、生物の生命力や自然界の循環を学ぶ。「有機農業は人を豊かにする教育力がある」と担当専任講師の澤登早苗さん(46)。澤登さんは、有機農業の教育的意義とこれまでの実践をまとめた本を出版した。
同学園は、人間社会学部、人文学部で構成。「聖書」「国際」と共に「園芸」を教育の柱に据え、入学したすべての学生に、実習科目「生活園芸1」を履修するよう定めている。
キャンパスに隣接する農場で週1回実習する。94年から農場は農薬と化学肥料の使用をやめ、有機農法を基本とし、01年には有機JAS認証を受けた。
春にはジャガイモ、キュウリなどを、秋には白菜、大根などを植える。近くの養鶏場の鶏ふんや牧場の牛ふんから作った堆肥(たいひ)、米ぬかを畑の肥料にする。刈り草や剪定(せんてい)した枝で地面を覆い、雑草を防ぐ。
都市化が進み、多くの学生は普段、土や生物に接する機会が少ない。最初は着替えて畑に入ることを面倒くさがるが、6月過ぎ、キュウリの収穫の頃になると、育ち具合を気にかけるようになるという。
「自分が育てている野菜がまるで子どものように思える」「土を汚いと思わなくなり、ミミズや虫がいても平気になった」。学生たちのリポートにはそんな感想が並ぶ。澤登さんは「有機農業は多様な生き物を認め、命のつながりと物質の循環を大切にする。学生は自分と自然のつながりを確認し、自分が生かされていること、命あるものとの共生を認識できる」と話す。
著書「教育農場の四季」(コモンズ刊、税抜き1600円)では、授業の模様のほか、作物の栽培方法、教育プログラム案なども載せている。