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無縁だった文学賞を2つ受け、今年最も活躍した作家の一人に。「落選のたびに落ち込んでいた編集者の喜ぶ顔が見られてうれしかった」と恩田陸さん
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作家・恩田陸さんの新作「ネクロポリス」(朝日新聞社)はミステリー、ファンタジー、ホラーといった様々な娯楽小説が融合した、というより大集合してしまった趣の物語だ。英国と日本の要素が微妙に混じりあった国で次々と起きる不思議な現象に、いや応なく引き込まれてしまう。初の上下巻に構築された架空世界には、古きよき長編物語への郷愁が詰まる。そして訪れる読書のだいご味——。
「ミステリーを書くつもりだった」と本人はいう。物語序盤に大鳥居で起きる不可能状況での殺人や、切り裂きジャックを思わせる連続殺人鬼「血塗れジャック」の存在からして、ミステリー色は強烈だ。しかし、そうした謎も、舞台となる極東の島国「V.ファー」という場所の魅力の構成要素でしかない。
V.ファーは、英国の植民地支配を受けた後、日本の文化が流入した不思議な国。聖地アナザー・ヒルで年に1カ月、「ヒガン」と呼ばれる祝祭が開かれている。この間は死者が実体として現れ、人々は彼らを「お客さん」として迎え、ひとときの交流を果たす。「お客さん」は決してうそをつかないため、謎解きに大きな役割を果たすはずなのだが……。
ヒガンは「彼岸」への思いから生まれた。「肉親の死が見えやすかった昔と違い、いま生死の境目がぼやけている。死が隠されているがゆえに、過剰に怖がったり、軽視したりと不健全になっている気がします。突然、死んだ人と会えたらいいだろうなという想像から、創造していった」
そんな非日常空間は、細かく書き込まれたアナザー・ヒルの風習や風俗でさらに強化される。卵をつかった占いやウソを見分ける審判など、次から次へと現れる不可思議な現象と、その解析は、「いま異世界にいる」という感覚を増す。
「細かい設定を考えていくのが楽しかった。過去の作品は、物語の終わりが来る瞬間がわかったのに、自分自身がひたりっぱなしで終わりが見えなかった。だから今までで一番長くなったんです」と笑う。
失われた人やモノ、時への思い。今年、二つの文学賞を受けた「夜のピクニック」や、「蒲公英(たんぽぽ)草紙」「ユージニア」といった近作も含め、恩田作品に通底するのは郷愁感だ。今回も、原稿用紙1600枚に及ぶ大部の作品自体が、作者の郷愁から生まれた。
アナザー・ヒルには、風の吹く丘やにぎやかなパブといった、自身が読書で親しんだ英国の描写が散在する。とりわけ、19世紀のヴィクトリア朝の色が濃い。
「読者が物語を物語として楽しんでいた大長編時代へのノスタルジーなんです」