タレント本の中で、人気お笑い芸人の本が台頭している。レイザーラモンHG、長州小力、オリエンタルラジオらが、テレビで見せるネタをそのまま載せた「ネタ本」だ。人気は続くのか。
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若手お笑いコンビ、オリエンタルラジオが4月に出した初の単行本『オリエンタルラジオ1』は部数が5万部になった。「一日3ミリバス停ずらす! 二年をついやし自宅の前に」と、ラップのような乗りのワンフレーズネタを、大きめの文字で紹介。各ページに「武勇伝 武勇伝 武勇デンデンデデンデン」の文字も続く。
出版したワニブックス書籍編集部の吉本光里さんは「今はバラエティー番組でテロップが入るので、笑いを文字で読むことに違和感はありません」と話す。企画したのは、オリラジの2人が深夜のオーディション番組に出たばかりだった昨春。出版時の人気は全くの未知数だったが、「本に向いているネタだ」とヒットを確信したという。
かつてのタレント本は、芸能人が素顔や本音をのぞかせ、ライフスタイルを書くのが定番だった。テレビのネタをまとめた今回のブームの走りは、お笑いコンビ「いつもここから」の『悲しいとき』(扶桑社)。01年に出版され、36刷で13万3000部に達した。
04年に出版されて30万部を超えた『ヒロシです。』(同)、3巻で計28万部の『パペットマペットの4コマショートコント大作戦』(竹書房)、2巻で計10万部となったレギュラーの『あるある探険隊』(同)などが続いた。
レイザーラモンHGの『HG』(竹書房、6万部)や長州小力の『キレてないですよ。』(イースト・プレス、3万部)は実写マンガといった趣だ。
値段はいずれも1000円前後で、内容とともにお手頃感がある。書店の「ネタ本」を集めたコーナーでは、10〜20代のカップルや友人同士が、おしゃべりしながら立ち読みして盛り上がっている。簡単に笑いを共有できるアイテムのようだ。
一方、芸人側にとってもネタ本は魅力的なフィールドという面がある。オリラジの藤森慎吾さんは巻末のインタビューで「武勇伝だけではなく、中田(敦彦)、藤森という個々をもっと知ってもらいたい」と語る。吉本興業広報部は「ギャラと印税ではけたが違う。若手芸人の喜びは違います」。
知名度以上に本が売れた例が相次ぐなど、出版社にとっても魅力はある。しかし、ブームの持続には慎重な見方もある。
『悲しいとき』や『ヒロシです。』を担当したネタ本の仕掛け人、扶桑社書籍編集部の碇耕一編集長は、『ヒロシ——』以後、ネタ本を手がけていない。「これだけたくさん出てくると、売れる・売れないが極端になる。また、ネタ一つで売る芸人は本で失敗すると立ち直れない。活字は残りますから」
タレント本に詳しい書評家の吉田豪さんは「飲む打つ買うといったやんちゃな話がタレント本の面白さ。昔の芸人は失敗ぶりも激しかったが、今の芸人はまじめで手堅い。だから、本人の人生を掘り下げる必要のないネタ本が増えたのでしょう。作りやすく、値段が安く、読みやすい。今のネタ本は、芸人の人気が最高になる『最大瞬間風速』にいかにあわせるか、しか考えていない」と手厳しい。