現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. BOOK
  4. 出版ニュース
  5. 記事

月刊誌 冬の時代 相次ぐ休刊、雑誌の今後は

2008年9月13日

写真「月刊現代」の高橋明男編集長写真「ロードショー」の藤井真也編集長グラフ

 雑誌、特に月刊誌の休刊が相次いでいる。総合誌、ファッション誌、専門誌とジャンルを問わず、出版社の規模も大手から中堅までいろいろだ。雑誌の世界に何が起きているのか。1日に休刊を発表した講談社「月刊現代」の高橋明男編集長、集英社「ロードショー」の藤井真也編集長にいきさつを尋ね、雑誌の世界に通じるライター永江朗さんの分析を聞いた。(西秀治、竹端直樹)

■情報加速、読者移り気―「月刊現代」高橋明男編集長

 休刊発表後、読者や書き手の方の大半が「ノンフィクション分野で唯一、頑張ってきた雑誌なのに」と残念がってくれています。30万部超の時代もありましたが最近は8万数千部。広告はほとんど入らないから、部数の落ち込みがこたえます。

 世の中の流れと月刊誌のペースの折り合いが難しくなってもいました。秋葉原の殺人事件も、次の事件があれば忘れ去られる。事件後すぐ用意した原稿が、発売段階では話題にもならなかった。自民党総裁選は22日に投開票ですが、月刊現代は21日が締め切り。紙面に反映できません。

 ネットを含めて情報の流れがすごく速いし、みんな移り気になった。月刊誌を腰を落ち着けて読む感覚がなくなった。

 ノンフィクションは編集者の力量が重要。スキルを失えば取り戻すのは難しい。そこを私は主張し、なくすべきではないと言ってきた。会社も社員の育成の場と分かっている。その上で今回はどうしようもないと。無念です。

 講談社はノンフィクションの新媒体を作ります。ノンフィクション賞も続ける。採算が合わない分野だが、覚悟を決めるしかない。真実を探し、あぶり出す。政府や公的機関は情報を隠しますから。

 残るは3号。ノンフィクションには力があることを伝えたい。

■媒体も市場も細分化―「ロードショー」藤井真也編集長

 映画文化を担った自負はありますが、部数減は避けられなかった。かつては映画スターの情報を届けるには「ロードショー」「スクリーン」がベストだった。今は女性誌やフリーペーパー、インターネット、あらゆる媒体が情報を提供する。

 最近の誌面では、スターのファッションやライフスタイルも含め、女性誌のような試みもしました。素材は映画会社が各媒体に共通に出すので、「料理の仕方」でしか差別化できない。でも、「パイレーツ・オブ・カリビアン」ぐらい強い映画じゃないと読者が反応しなくなった。

 広告は近年、エンターテインメント雑誌への出稿が渋くなっている。映画会社は、宣伝費があればテレビに集約するんです。

 休刊の決定に「来たか」と思いました。歴史や伝統なんて言っていられない時代。厳しければ撤退せざるをえない。ただ、役割が終わったと思いたくはないんです。存続するなら人員を最小限にし、部数を絞って本当にコアな人に向けたカルチャー誌しかない。狭いターゲットに当てる手法。そんな提案もしました。

 活字離れと言われますが、若い人でもすごく読む人がいるし、携帯小説もある。ただ、若い世代は情報にお金をかける必要がないと思っている。興味があっても立ち読みで済ます。女性誌は付録が豪華な時だけ買う。100万部雑誌のような大きなビジネスは難しい。市場は細分化してますから。

■ビジネスモデル限界―永江朗さん

 雑誌がこの世の春を満喫する「雑誌バブル時代」が終わりを迎えた気がします。

 大手出版社も部数低迷と広告収入減に耐えられなくなってきた。漫画も売り上げは落ち込んでいます。書店、特に小規模な街の本屋さんが減り続けることが痛手ですね。広告収入も依然厳しく、06年にインターネットに抜かれたのが象徴的です。

 いまや大手を含め、出版社の経営基盤はもろい。伝統や、出版の意義がある雑誌でも、赤字を見過ごせなくなった。月刊誌の次は、週刊誌の選別でしょう。

 雑誌も書籍も抱える日本型の「総合出版社」や、従来の雑誌ビジネスモデルが限界なのかもしれません。

 米国では書籍と雑誌をつくる出版社は別々。販売ルートも、書籍は書店が売り、雑誌は定期購読化が進んで読者の手元に直接届くスタイルが主流です。

 日本の出版社は各社とも「後退戦」の最中。縮小しながら新しいビジネスモデルを模索する、上手な「後ずさり」の仕方が求められています。

 従来の読者層ではなく、若い世代向けに新ジャンルを開拓する。販売チャンネルを定期購読に絞る。無料誌やウェブマガジンに転進する。今後の出版業は、従来のビジネスモデルを捨てる勇気が必要かもしれません。

(ライター、早稲田大学客員教授)

●今年に入って休刊が発表された主な雑誌

「主婦の友」(主婦の友社、1917年2月創刊)

「月刊現代」(講談社、66年12月創刊)

「ロードショー」(集英社、72年3月創刊)

「PLAYBOY日本版」(集英社、75年5月創刊)

「広告批評」(マドラ出版、79年4月創刊)

「週刊ヤングサンデー」(小学館、87年3月創刊)

「論座」(朝日新聞社、95年3月創刊)

「ラピタ」(小学館、95年12月創刊)

「Style」(講談社、01年9月創刊)

「BOAO」(マガジンハウス、04年9月創刊)

「KING」(講談社、06年9月創刊)

「GRACE」(世界文化社、07年3月創刊)

検索フォーム
キーワード: