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加藤陽子教授が新書 中高生と考えた戦争

2009年8月6日

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 戦争をめぐって近代の日本人は、いかなる選択をしてきたのか。加藤陽子・東京大学教授(日本近代政治史)が中高生とともに授業で考え、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)にまとめた。戦争を直接知る世代が少なくなるなか、「当時の人の立場に自分を置き換えて考え抜き、『戦争を生きる』ことが重要」と語る。

 時間をかけ、それなりに説得力のある政策を決定していたのに、結果的に道を誤った――。『戦争の日本近現代史』(講談社現代新書)などで明らかにしてきた近代日本の軌跡を、今回は若い世代にも伝えようとした。

 授業は神奈川県にある私立学校で、中学1年から高校2年までの約20人を相手に行われた。5日間、延べ25時間。日清戦争から太平洋戦争までの半世紀ほどの国内外の動きを扱った。

 内容は、中高生の授業の難度を上回るものだった。だが、「なぜ福沢諭吉は日清戦争に賛成したのか」など、歴史の具体的な局面に即して政治家や国民の認識を推測させることで、「少しだけ、当時の人の感覚がわかった」という感想が生徒から出た。また、中国の胡適や英国のロイド・ジョージといった政治家の言葉の力に、彼らは圧倒されたという。戦争の教訓をいかに伝えるかは、戦後生まれが人口の4分の3を超えた日本で切実な問題。でも、「当事者の体験談のような形でなくても、伝えられることはあると感じました」。

 歴史を学ぶ面白さにも気づかせようとした。たとえば、9・11後にテロ掃討作戦をとった米国と、日中戦争時に蒋介石の国民政府との和平を拒んだ日本。時代も状況も違う両者を比べると、「相手を戦争の対象として認めず、国内で不法行為を働く悪い人たちを取り締まるような感覚で武力行使した点で共通する」という。

 戦後64年。「日本の戦争やその責任について、まだ国内で十分に議論されていないのではないでしょうか」。議論の硬直を突き崩す鍵は、戦争の悲惨な記憶がない若い世代にあるのかもしれない。

 「戦争に関する批判や落胆では失敗学につなげられません。歴史を学び多くを考えておくことは、将来何かを選択する場面に立たされたとき、きっと役に立つはずです」(新谷祐一)

表紙画像

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

著者:加藤陽子

出版社:朝日出版社   価格:¥ 1,785

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