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〈本の舞台裏〉一軒家で本づくり

[掲載]2009年10月18日

 築48年の一軒家を借り、社員7人が畳の上に机を並べて本を作っている。東京都目黒区の出版社「ミシマ社」。社長の三島邦弘さん(34)がほぼ3年前に設立した。社員の平均年齢は31歳と若い。

 三島さんはPHP研究所などで編集者として働いたことがある。「会社の論理で仕方がないとはいえ、新刊中心、目の前の売り上げ重視で、本が消費財になっている。自分が作った本は長く読まれて欲しい」と思っていた。「それなら自分で出版社を作ればいい」と始めたのがミシマ社だ。出版不況が深刻になっている時期。周囲からは「やめときなさい」「酔狂だな」と言われた。

 3年間で出した本は17冊。内田樹著『街場の中国論』『街場の教育論』や松本健一著『海岸線の歴史』などが好評だ。最新刊は3周年記念の斎藤孝著『〈貧乏〉のススメ』。内田さんには会社設立の際に「ベストセラーを狙うのではなく、顔の見える10人、100人の読者に届く本を作ることです」と助言された。

 だから、読者とつながることを大切にしている。本には読者カードのはがきを入れ、届いた感想にはすべて返事を出す。一冊一冊の本への思いをつづったチラシ「ミシマ社通信」も出し続けている。「社屋」の一軒家に読者を集めて「寺子屋ミシマ社」も開催。編集、営業、宣伝の仕掛けなど、出版のおもしろさを体感してもらう試みだ。こうした活動に大手出版社の幹部も「出版社の原点を見る思い」と賛辞を送る。

 出版する本の8割は取次会社を通さずに書店と直(じか)取引するので、書店の粗利益を30%にした。取次会社を通した多くの出版社の本では22%程度だが、高めに設定したのは「本が読者に届くのは、書店さんがあってこそ」と考えるからだ。

 三島さんは「小回りが利いた方がいいから、これ以上、会社は大きくしません。雑な本作りをしないで、誠実に、血の通った仕事を続けていきたい」と話す。(西秀治)

表紙画像

街場の中国論

著者:内田 樹

出版社:ミシマ社   価格:¥ 1,680

表紙画像

街場の教育論

著者:内田 樹

出版社:ミシマ社   価格:¥ 1,680

表紙画像

海岸線の歴史

著者:松本 健一

出版社:ミシマ社   価格:¥ 1,890

表紙画像

<貧乏>のススメ

著者:齋藤 孝

出版社:ミシマ社   価格:¥ 1,575

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