2010年7月3日
朝日新聞で連載された『悪人』(吉田修一作)の挿絵を担当した現代美術家の束芋(たばいも)さんが、絵本『惡人(あくにん)』(朝日新聞出版、税別1800円)を7日に出版する。全250話の挿絵を再構成し、小説から抜き出した言葉を載せた。美術家が紡いだもう一つの『悪人』になっている。
束芋さんは、日常に潜む「闇」をあぶり出すアニメーション作品で知られる。小説『悪人』は、出会い系サイトで知り合った男女の悲劇が物語の核。2006年3月から07年1月にかけて掲載された。
絵本『惡人』では、それぞれの挿絵に、新聞から切り抜いた小説の言葉を張り付けた。例えば、風船のように膨らんだ男の顔の絵には「怒りでからだが膨張するようだった」という一文がつく。自身がこの絵を描くときに手がかりにした言葉だ。
250の作品は大きさを変え、文字を従えながら絵巻のように続く。絵本は文庫版の小説『悪人』と同じサイズで、色を再現するために新聞紙に近い紙を使っている。
絵本について束芋さんは「作り上げるのに2年かけた。『悪人』に登場するキャラクターは、全部自分でありえる。その多面的な世界を絵本の形で見せたかった」と話した。
10日には大阪市の国立国際美術館で個展が始まる。ここにも『悪人』の原画を展示する。連載終了から3年半。「登場人物の一人ひとりが自分の友だちのよう」と話す束芋さんと悪人とのかかわりは続く。(西田健作)
著者:束芋
出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 1,890
著者:吉田 修一
出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 567
著者:吉田 修一
出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 567