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米書店、消滅の危機 チェーン2位倒産の衝撃

2011年2月18日

 米国で約670店を抱える書店チェーン第2位が16日、倒産した。インターネットでの書籍販売や電子書籍が普及し、米国では書店ビジネスそのものが崩壊の危機にある。

■ネット販売・電子書籍台頭

 「手元資金が枯渇し、将来に向けて戦略を立て直すのに必要な原資がなくなった」。破産裁判所に米連邦破産法11条を申請した米書店チェーン2位のボーダーズ・グループのマイク・エドワーズ社長はこうコメントした。

 同社は金融会社からつなぎ融資を受け、業務を続けながら再建を目指す。3割にあたる約200店を今後数週間以内に閉め、従業員も多く解雇する見通しだ。

 ただ、再生できるのか、疑問の声も多い。

 同社は1971年に創業以来、都市部を中心に大型店を展開してきた。多くの品ぞろえで消費者を引きつけ、ピークの2005年には1200店を超えた。

 しかし、その後は米アマゾンのネット販売が広がるのと軌を一にして下降線をたどる。07年度にはボーダーズの売上高と、アマゾンの北米の書籍などの販売額が逆転。無店舗で利益率の高いアマゾンに対し、ボーダーズは人件費や店舗維持費が負担となり、06年度から赤字が続いた。

 最近は、アマゾンの「キンドル」やアップルのタブレット端末「iPad」など向けの電子書籍も急成長している。購入が簡単で、ものによっては紙の書籍より安い。

 米出版社協会によると、10年の電子書籍の米売上高は前年の約2.6倍となり、紙の書籍の売り上げの約1割に達した。ボーダーズも昨年、電子書籍の配信に参入したが、出遅れている。

 約720店を展開する米書店チェーン首位のバーンズ・アンド・ノーブルも赤字が続き、店舗の削減を進めている。昨年末には投資家主導でボーダーズによるバーンズの買収話まで浮上したが、実現しなかった。

 中小の書店はさらに厳しい。「うちも来月には閉店するよ」。ニューヨーク州イサカ市の大学近くで書店を経営するゲリー・ワイスブロットさんは言う。数年前まで周辺に計6軒の書店があったが「これで半径30マイル(約50キロ)以内に書店はなくなる」。

 5年ほど前から急激に業績が悪化した。大型店との競争では得意先を確保して生き延びたが、アマゾンなどのネット販売に太刀打ちできない。例年売り上げが回復する年末商戦が昨年は振るわなかったのを見て、閉店を決めた。

 米アップルが楽曲のネット配信に乗り出した時、街からCD販売店が消えた。書店でも同じ光景が繰り返されようとしている。独立系の書店が加盟する米書店協会には1993年には約4300店が加盟していたが、今は約3分の1の約1400店に減った。

■国内は10年で3割減

 日本の書店も苦境が続く。出版社アルメディアの調べでは、00年に2万1654店あった書店数は10年に1万5314店となり、この10年間で約3割減った。

 活字離れもあって出版市場が縮小しているためだ。出版科学研究所によると、10年の書籍・雑誌の販売金額は推定1兆8748億円で、6年連続で前年を下回った。ピークの96年より約3割減った。

 なかでも「街の本屋さん」が厳しい。駅前や幹線道路沿いの大型書店、アマゾンや楽天などのネットによる書籍販売に押されて売り上げが伸び悩み、閉店も目立つ。

 帝国データバンクによると、書店経営業者の倒産件数(負債総額1千万円以上)は07年から4年連続で30件を超えている。01〜05年の5年間は115件だったが、06〜10年の5年間は183件に増えた。

 大型店でも、08年に九州最大手だった明林堂書店(大分県別府市)が民事再生法の適用を申請するなど経営破綻(はたん)する例が出てきた。生き残りのため、印刷大手の大日本印刷は08年以降、書店大手の丸善やジュンク堂、文教堂などを子会社化し、グループ内での再編を進めて効率化を図る。

 ただ、今後は日本でも電子書籍が本格的に普及するとみられる。書店の経営環境は厳しさを増すが、その打開策はなかなか見えない。

(山川一基=ニューヨーク、角田要)

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