ふっくらと気品のある文章で、エッセーや美術小説を発表している太田治子さん。母は、太宰治『斜陽』の主人公のモデルだ。
「母はよく本を読んでくれました。幼い頃、病後間もない母と、葉山のおじの家で居候生活をしていたのですが、海岸の岩陰に座って『人魚姫』を読んでくれたことも」
猫が大好きな太田さんの最近のお気に入りは『くろねこたちのトルコ行進曲』(三枝和子文、朴賢淑絵、めるくまーる・1050円)。サブ少年は母を亡くした野良の子猫たちと心を通わせる。ある日、高校生に子猫がいじめられ目にケガを。サブと子猫、野良猫軍団は高校生に立ち向かう。
「野良猫はいじめられがちです。虚無的な猫もいて、早く死んでしまう。そういういじめに遭っても、皆で向かって猫たちのほうが強くなり、高校生たちをおびえさせる。この童話が、さらにすてきなのは、高校生が謝ったら許してあげるところ。復讐(ふくしゅう)劇でないところがいいですね」
愛猫家だった作家・三枝和子さんは、闘病中に初めての童話となるこの作品を書き上げ、2カ月後に亡くなった。
「私も元気な時はムンクの絵にあこがれるけど、病気の時は、ルノワールの明るいふくよかな少女に救われるの。三枝さんも、優しさや柔らかな心に包まれたいというお気持ちだったのでしょうね」
(フリーライター・中島久美子 撮影・和田久士)
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朝日新聞夕刊の人気連載、どくしょ応援団「おはなしのくに」から「私のお気に入り」と「7月に5冊」を転載しました。