もう株も不動産も信じられない……ネガティブな空気を吹き飛ばし、笑いをもたらしてくれそうな本を探しました。
帯の「ラブと笑いは両立しないの?」というコメントが目を引く『オトメノナヤミ』は、イギリスの高校が舞台の青春コメディーです。「将来の夢はお笑い芸人」の主人公ジェスは、映画にもなった小説『ブリジット・ジョーンズの日記』に通じる自虐キャラで、可愛くて要領の良い親友と自分を比べては世をすねる日々。巨乳に見せかけるためミネストローネを入れた袋を胸に忍ばせたらパーティー会場で破裂したり、自分のお笑いネタを披露する日にインフルエンザで倒れたり、「サイアク」なことばかり起こりますが、最後は気になる男子に告(こく)られ、いい感じになってハッピーエンド。
さんざん自分には魅力がないみたいなことを言っておきながら、実は美人だったというオチでしょうか。ブリジット・ジョーンズと同じく自分で言うほど不幸ではないのです。笑って損した気分です。
いっぽう、『必笑小咄(こばなし)のテクニック』に引用されていた、「自分や他人の弱点に対し、突然優越感を持った際に生じる勝利の表現こそが笑い」という哲学者ホッブスの言葉には妙に納得させられました。誰かが騙(だま)されたり、絶体絶命になったり、「不幸」や「死」にまつわる禁断のブラックジョークで痛快に笑えるのが人間の業。この本の中で最も面白く感じたのは「自殺に関する本を図書館に借りに来た人が誰も返しに来ない」というダークな小咄でした。長年小咄を研究してきた著者によると「傑作小咄のやり口が、詐欺の手口にソックリ」で、読者が予想する展開とオチのギャップが大きいほど笑いを取れるそうです。この本で笑いの法則を身に着けたら、実際に創作してみても良いかもしれません。
『ショートショートの広場』は、「小説現代」誌上で開催中のショートショート・コンテストに入選した中から68作を選んで阿刀田高氏の選評を加えたもの。わびさびテイストとでも言うべきか、複雑で陰があり、一度読んだだけではわからない奥が深い作品が多いです。何より、毎月ショートショートのネタを真剣に錬(ね)っている人がこんなにたくさんいる、という事実だけでも日本の未来に希望が感じられ、自然と微笑(ほほえ)みが浮かびました。