あなたはテッド・チャンという作家の短篇(たんぺん)小説「あなたの人生の物語」をすぐに知るだろう。一九九八年に発表されたこの短篇の主人公は言語学者。彼女は地球に飛来した宇宙人とのコ………[記事全文]
[評者]瀬名秀明(作家) [掲載]2010年3月14日
いつの世も、正史に記録を残さない庶民が歴史の底辺を支え、消えてゆくのだが、幕末の博徒集団に限って言えば、ただ消えていったとは言い難い。もともと幕藩体制の隙間(すきま)を埋めるかた………[記事全文]
[評者]高村薫(作家) [掲載]2010年3月14日
「誤解されると困るが」とその原子物理学者は前置きして、「広島への原爆投下を知ったとき、我々の机上の計算が現実になるとはこういうことかとの感慨をもった」とつぶやいた。戦時下の日本で………[記事全文]
[評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2010年3月14日
久しぶりに編まれたこの作家の短編集である。八編が収められているが初出の文芸誌にはばらつきがあるし、執筆の時期にも距(へだ)たりがある。読み通して著者の感性と精緻(せいち)な文章が………[記事全文]
[評者]阿刀田高(作家) [掲載]2010年3月14日
はるか遠くのアルゼンチン作家の小説、2段組みで500ページの分量、宗教的なにおいのするタイトル、書店で本書を手に取ったとしても、読むのにちょっとひるんでしまう。しかし数ページ読め………[記事全文]
[評者]江上剛(作家) [掲載]2010年3月14日
戦国時代の悲運の女性キリシタン、細川ガラシャ。本名、明智玉子(たまこ)(1563〜1600)の生涯を、女性史の視点、キリシタン改宗の過程と意義を通して明らかにした書である。 将………[記事全文]
[評者]石上英一(東京大学教授・日本史) [掲載]2010年3月14日
時代が天才を渇望しているのか、近頃「天才」を表題に付した本が目につく。私もこの欄で2冊紹介した。なぜか天才には人を熱狂させる魔力が潜む。 『失われた天才』のニレジハージは、予想………[記事全文]
[評者]横尾忠則(美術家) [掲載]2010年3月14日
流行歌の先駆け「カチューシャの唄(うた)」は、島村抱月から「日本の伝統的俗謡と西洋の歌曲の中間のような」と注文を受けて作曲したという。中山晋平は長野県の貧しい家に育ち、上京して抱………[記事全文]
[掲載]2010年3月14日
新中国成立後、知識人階級の一家がたどった悲惨な運命を、元教師が克明につづった体験記だ。筆者の父親は新聞記者。毛沢東の呼びかけに応じて新聞に発表した3編の文章が「右派言論」とされ逮………[記事全文]
[掲載]2010年3月14日
カントは『純粋理性批判』で、たとえば、「世界には始まりがある」というテーゼと「始まりがない」というアンチテーゼが共に成立することを示した。それはアンチノミー(二律背反)を通しても………[記事全文]
[評者]柄谷行人(評論家) [掲載]2010年3月7日
阿佐ケ谷という町は東京都杉並区にある。だが、この際、地名については忘れていただいてもかまわない。阿佐ケ谷住宅の「奇跡」の最大の所以(ゆえん)は、それが1958年に誕生したというこ………[記事全文]
[評者]重松清(作家) [掲載]2010年3月7日
ちょっと刺激的なタイトルだが、西欧の大手紙記者が時間をかけてアフリカ各地を取材したリポートだ。その具体的な報告には説得力がある。 たとえばナイジェリアのラゴス。世界最悪といわれ………[記事全文]
[評者]松本仁一(ジャーナリスト) [掲載]2010年3月7日
本書は元最高指導者が幽閉16年の歳月の中で語った中国政治の内幕を伝える書である。限られた時期とはいえ、トップレベルの政策決定過程を内側から、これほどまでに赤裸々に描きだしたのはこ………[記事全文]
[評者]天児慧(早稲田大学教授・現代アジア論) [掲載]2010年3月7日
著者は「ナショナル・ジャーナル」というアメリカ政治の専門週刊誌に、高度な分析を執筆しているジャーナリストである。その著者が、本書ではアメリカの過去・現在・将来について、海外での取………[記事全文]
[評者]久保文明(東京大学教授・アメリカ政治) [掲載]2010年3月7日
西周は、明治期に西洋近代の用語を日本語に導入する上で、絶大な貢献をなした。有名なのは「哲学」の語の発明であるが、現代日本人が日常的に用いている彼の造語は数多い。理性、原理、主観、………[記事全文]
[評者]小杉泰(京都大学教授・現代イスラーム世界論) [掲載]2010年3月7日
1950年代から現在までの武力抗争の絶えないハイチと、NYブルックリンを舞台に、作者とその伯父一家の歩んだ道のりを描く自伝的小説である。 作中の牧師は、生まれた瞬間から人は死に………[記事全文]
[評者]鴻巣友季子(翻訳家) [掲載]2010年3月7日
「オペラ座の怪人」で描かれる地底湖。パリ・オペラ座が建つ場所はかつてセーヌ川が流れていた軟弱地盤の農地で、ガルニエは劇場建設に際し大量の地下水を汲(く)み上げて土地を乾かし、巨大………[記事全文]
[評者]瀬名秀明(作家) [掲載]2010年3月7日
直木賞を受賞後の第1作。東京、新潟、北海道・稚内と舞台を移しながら繰り広げられる犯罪サスペンスだ。 旅行業者の関口卓也はロシアから来た女性ターニャの案内役になる。ターニャは妹を………[記事全文]
[掲載]2010年3月7日
父親が亡くなった時から、死はにわかにリアルな問題として私の目の前に浮上しました。「人間、誰でもいずれは死ぬ」ということはやっとわかったものの、しかし自分の問題として考えてみると、………[記事全文]
[評者]酒井順子(エッセイスト) [掲載]2010年2月28日
ブログや電子本、世界規模で物議をかもすグーグルによる書物の電子データ化……文字を巡る環境は今世紀に入って激変し、「グーテンベルグからグーグルへ」などと言い表される。こうした問題を………[記事全文]
[評者]鴻巣友季子(翻訳家) [掲載]2010年2月28日
信じられないことだが、ダリが画家の卵を対象に、1947年に技法書を書いていた。長らく絶版だったらしいが、今頃になって日本語でお目見えした。どうせダリのことだ。まともな技法書など書………[記事全文]
[評者]横尾忠則(美術家) [掲載]2010年2月28日
ゲーリー氏は美しい黒人の女性を事実上の妻にしている。かれは南部に住む「奴隷制廃止論者」の大農園主であるが、彼女を正式の妻にし、そして2人の子供を奴隷から解放するために北部に移住す………[記事全文]
[評者]南塚信吾(法政大学教授・国際関係史) [掲載]2010年2月28日
これはとんでもない本である。どうとんでもないのかといえば、一九六九年に発表された仏語の原作は、三百頁(ページ)を超える長さがありながら、「e」の文字を一度も使っていないのである!………[記事全文]
[評者]奥泉光(作家、近畿大学教授) [掲載]2010年2月28日
1980年代までの日本の教育は、学校から仕事への円滑な移行を可能としている点で、諸外国から評価されてきた。ところが2009年、経済協力開発機構は、日本教育の美徳が揺らぎ、数々の問………[記事全文]
[評者]耳塚寛明(お茶の水女子大副学長・教育社会学) [掲載]2010年2月28日
日本で初めて科学小説なる言葉を用いたのは憲政の神様・尾崎行雄であったという。明治初期の人々は国会が開設されたら日本はどうなるかという未来への空想物語を読んで議会政治を学んだ。尾崎………[記事全文]
[評者]瀬名秀明(作家) [掲載]2010年2月28日
岩波文庫から、多くの著書が翻訳刊行されている哲学者を挙げると、まずプラトン、ルソー、カントが並ぶ。いかにも教養主義と感じるが、それに次いで多い部類の一人が、何とニーチェである。戦………[記事全文]
[評者]苅部直(東京大学教授・日本政治思想史) [掲載]2010年2月28日
青森・八戸で実家の農作業を手伝う25歳の「おれ」。デザイナーになることを夢見ながらも県外に出たことはなく専門学校も卒業間近にやめてしまった。農業のかたわら、木の上の家「ツリーハウ………[記事全文]
[掲載]2010年2月28日
家族の平穏な日常を奪い住民のきずなを壊す冤罪を、取材した朝日新聞記者の著者は官権の「犯罪」と指弾する。2003年、鹿児島県議選。買収工作があったとする県警の「架空の物語」に沿い、………[記事全文]
[掲載]2010年2月28日
こんな自分もありえた。あんな自分がいたかもしれない。人生は「なしとげられる《かもしれなかった》ことにも満たされている」。そんな可能世界に奇妙な現実感を吹き込む小説をいま、私たちは………[記事全文]
[評者]尾関章(本社編集委員) [掲載]2010年2月21日
昭和十年代に軍事主導体制が進むとき、それに抗した反軍政治家として斎藤隆夫の名が語り継がれる。 ところがこの日記を読んでいくと、彼は日本的共同体に谺(こだま)する国民の声を議会に………[記事全文]
[評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2010年2月21日
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